もっと知りたい雪舟―生涯と作品 (アート・ビギナーズ・コレクション)
雪舟に魅せられて機会あるごとに美術展に足を運んできました。分かりやすく画家や絵師を紹介する「もっと知りたい」シリーズに雪舟が加わりました。これまで登場してこなかったのが不思議ですが、満を持しての掲載で内容は至極満足しています。
雪舟の幼少期から晩年まで時系列でその歩みと作品を紹介してあります。有名な作品群と比較して、その生涯は少し分かり辛い雪舟ですが、著者の島尾新氏の「わかりそうでわからない」という評を受け取り、そのまま受け入れることが雪舟の理解につながるのでしょう。
雪舟の6点の国宝全てが詳しい解説と共に掲載してあり、それは好印象をもたらすことでしょう。凛とした厳しい空間美に声も出ない「秋冬山水図 2幅(東京国立博物館)」は58頁の見開きにありますが、冬景は日本画全てを代表する名品でしょう。江戸時代に神格化されたのが伺える格調の高さを再確認しました。
一方、61頁の「慧可断臂図」はまさしく「破格のデザイン」の評そのもので、この画風の幅広さが雪舟をより捉え辛くしているのでしょうが、実に魅力的な作品です。
同様に「破墨山水図(東京国立博物館)」の解説「山口の大家となり、全国的な知名度もかなり得たうえでの都への自筆のメッセージ」と捉えた筆者の慧眼は見事でした。
44ページ以降の「山水長巻(毛利博物館)」は一度是非現物を拝観したいと願っている作品です。この16メートルという長大な巻物の凄みは「雪舟のすべてを盛り込む」という評の通りで圧倒的な迫力でもって迫ってきます。
「天橋立図(京都国立博物館)」は特集のコーナーで8ページにわたって詳説されてあり、各部の意味合いやその情報の精度など伺い知れない観点への見地が記されていました。
75頁に6点目の国宝「山水図(個人蔵)」が紹介してあります。最晩年の作品だそうですが、凛とした佇まいは不変です。風格ある画風に魅せられます。
なお、巻末に「おわりに 雪舟の達成 島尾新」「掲載作品を所蔵する美術館・博物館」「本書に掲載した雪舟関連作品」などが記されていました。
筆者の島尾 新氏は学習院大学教授で、日本中世絵画史専攻の方です。
雪舟の幼少期から晩年まで時系列でその歩みと作品を紹介してあります。有名な作品群と比較して、その生涯は少し分かり辛い雪舟ですが、著者の島尾新氏の「わかりそうでわからない」という評を受け取り、そのまま受け入れることが雪舟の理解につながるのでしょう。
雪舟の6点の国宝全てが詳しい解説と共に掲載してあり、それは好印象をもたらすことでしょう。凛とした厳しい空間美に声も出ない「秋冬山水図 2幅(東京国立博物館)」は58頁の見開きにありますが、冬景は日本画全てを代表する名品でしょう。江戸時代に神格化されたのが伺える格調の高さを再確認しました。
一方、61頁の「慧可断臂図」はまさしく「破格のデザイン」の評そのもので、この画風の幅広さが雪舟をより捉え辛くしているのでしょうが、実に魅力的な作品です。
同様に「破墨山水図(東京国立博物館)」の解説「山口の大家となり、全国的な知名度もかなり得たうえでの都への自筆のメッセージ」と捉えた筆者の慧眼は見事でした。
44ページ以降の「山水長巻(毛利博物館)」は一度是非現物を拝観したいと願っている作品です。この16メートルという長大な巻物の凄みは「雪舟のすべてを盛り込む」という評の通りで圧倒的な迫力でもって迫ってきます。
「天橋立図(京都国立博物館)」は特集のコーナーで8ページにわたって詳説されてあり、各部の意味合いやその情報の精度など伺い知れない観点への見地が記されていました。
75頁に6点目の国宝「山水図(個人蔵)」が紹介してあります。最晩年の作品だそうですが、凛とした佇まいは不変です。風格ある画風に魅せられます。
なお、巻末に「おわりに 雪舟の達成 島尾新」「掲載作品を所蔵する美術館・博物館」「本書に掲載した雪舟関連作品」などが記されていました。
筆者の島尾 新氏は学習院大学教授で、日本中世絵画史専攻の方です。
雪舟の「山水長巻」―風景絵巻の世界で遊ぼう (アートセレクション)
《山水長巻》と言えば雪舟の最高傑作として、美術書は言うまでもなく教科書等でも頻繁に取り上げられる名作である。
然しながら、その全図を知っているという方は意外にも少ないのではなかろうか。
それもその筈、本作品は中々お目に掛かれる物ではなく、然も全部で16メートルに及ぶ超大作である為、全てを掲載した書籍にはどうしても限りがあるのだ。
こうした中で、本書は《山水長巻》全図をコンパクトに紹介した稀なる書籍であり、雪舟愛好家の方は是非とも手に入れておきたい貴重な一冊である。
本書は画面を効率よく使う事に依って全体図、拡大図を掲載。
所謂「余白の美」を生かした優れた構図を再確認出来ると共に、墨のダイナミックな筆致の微細に至るまで余す所無く伝えてくれる。
更には、とかく墨絵というと黒一色の濃淡のみで表現されているように思いがちだが、実はこの作品では僅かながら色彩も取り入れており、それが画面をさりげなく引き締めている事も見て取れるのだ。
描き込まれた人物はのっぺらぼうで表情がないものの、それが却って多くを語る事無く自然に風景の中に溶け込み、大自然の中で営まれる人々の生活を感じ取る事が出来る。
因みに、これはちょっとした工夫なのだろうが、本書ではその人物達を敢えて独立させて掲載しているので、普段は余り気にも留めなかった人物の姿を「成程、このように描かれていたのか」…と妙に感心し、改めて本作品では脇役である筈の人物達にも大いに関心を寄せてしまった。
解説も非常に解り易く丁寧。
また、本書の後半では雪舟が何故《山水長巻》を描いたのか、或いは構図、色目、図様の分析等など、美学の研究にも充分に応え得るだけの解説がなされているので、改めて雪舟の画業や技量をお浚いする事も出来るし、実に参考になる。
そして、何よりも本書は各頁のレイアウトに非常な心配りが感じられ、正しく「目で見て楽しい」一冊に仕上がっているのが印象的でもあった。
雪舟の世界を堪能出来、そして墨の魅力を改めて実感する事が出来る良書。
勿論、雪舟に関する優れた美術書や画集は他にも幾らでも出版されているが、どれを選ぼうか迷ったら、是非とも本書を手に取ってみて欲しい。
必ずや皆様を満足させてくれる事と思う。
然しながら、その全図を知っているという方は意外にも少ないのではなかろうか。
それもその筈、本作品は中々お目に掛かれる物ではなく、然も全部で16メートルに及ぶ超大作である為、全てを掲載した書籍にはどうしても限りがあるのだ。
こうした中で、本書は《山水長巻》全図をコンパクトに紹介した稀なる書籍であり、雪舟愛好家の方は是非とも手に入れておきたい貴重な一冊である。
本書は画面を効率よく使う事に依って全体図、拡大図を掲載。
所謂「余白の美」を生かした優れた構図を再確認出来ると共に、墨のダイナミックな筆致の微細に至るまで余す所無く伝えてくれる。
更には、とかく墨絵というと黒一色の濃淡のみで表現されているように思いがちだが、実はこの作品では僅かながら色彩も取り入れており、それが画面をさりげなく引き締めている事も見て取れるのだ。
描き込まれた人物はのっぺらぼうで表情がないものの、それが却って多くを語る事無く自然に風景の中に溶け込み、大自然の中で営まれる人々の生活を感じ取る事が出来る。
因みに、これはちょっとした工夫なのだろうが、本書ではその人物達を敢えて独立させて掲載しているので、普段は余り気にも留めなかった人物の姿を「成程、このように描かれていたのか」…と妙に感心し、改めて本作品では脇役である筈の人物達にも大いに関心を寄せてしまった。
解説も非常に解り易く丁寧。
また、本書の後半では雪舟が何故《山水長巻》を描いたのか、或いは構図、色目、図様の分析等など、美学の研究にも充分に応え得るだけの解説がなされているので、改めて雪舟の画業や技量をお浚いする事も出来るし、実に参考になる。
そして、何よりも本書は各頁のレイアウトに非常な心配りが感じられ、正しく「目で見て楽しい」一冊に仕上がっているのが印象的でもあった。
雪舟の世界を堪能出来、そして墨の魅力を改めて実感する事が出来る良書。
勿論、雪舟に関する優れた美術書や画集は他にも幾らでも出版されているが、どれを選ぼうか迷ったら、是非とも本書を手に取ってみて欲しい。
必ずや皆様を満足させてくれる事と思う。
チート [DVD]
早川雪洲氏の出演する作品は「戦場に架ける橋」位しか知らない。
しかしハリウッド最初の美形男性俳優として世界に名を轟かせ、彼に影響
を受けて俳優の道に進んだハリウッドスターが何人もいて、ハンフリー
ボガートもその一人らしい。
戦前のサイレント映画から戦後のトーキー映画及び、日本のTV放送初期
のドラマ出演をするなど日本で最初で最大の大スターなのである。
この「チート」というサイレント映画はセシル・B・デミル監督と組んだ
早川雪洲氏のデビュー作にして最大のヒット作なのだが、一寸
人種差別に基づいた部分があるのかなあと感じる反面、今観てもわかりやすい
ストーリーで音楽も映像にあっていると思った。
人妻に焼きごてを押す極悪人にも拘らず、魅力的な早川雪洲氏に心を奪われ
おしゃれをして映画館に通った女性ファンが大勢いたそうで興味深い。
1910年代の女性たちのエレガントなファッションや東洋と西洋の混ざった様な
一寸怪しく美しい家具・美術品はカラーで観てみたかった、モノクロのサイレント
な世界もシックで洒落てて良いんだけれど・・・。
しかしハリウッド最初の美形男性俳優として世界に名を轟かせ、彼に影響
を受けて俳優の道に進んだハリウッドスターが何人もいて、ハンフリー
ボガートもその一人らしい。
戦前のサイレント映画から戦後のトーキー映画及び、日本のTV放送初期
のドラマ出演をするなど日本で最初で最大の大スターなのである。
この「チート」というサイレント映画はセシル・B・デミル監督と組んだ
早川雪洲氏のデビュー作にして最大のヒット作なのだが、一寸
人種差別に基づいた部分があるのかなあと感じる反面、今観てもわかりやすい
ストーリーで音楽も映像にあっていると思った。
人妻に焼きごてを押す極悪人にも拘らず、魅力的な早川雪洲氏に心を奪われ
おしゃれをして映画館に通った女性ファンが大勢いたそうで興味深い。
1910年代の女性たちのエレガントなファッションや東洋と西洋の混ざった様な
一寸怪しく美しい家具・美術品はカラーで観てみたかった、モノクロのサイレント
な世界もシックで洒落てて良いんだけれど・・・。