すごくよかった。キャラクター達が人間として描かれいていて（最近なかなかない）微細な心の変化に時に感情移入し、
時にどういう心境だろうと疑問に思ったり。そういう部分の想像の余地を楽しむことができるのもこの作品ならではだと思います。
「手のひらを太陽に」を聴くと涙が出ます。この歌にすべてが集約されている気がします。
音楽もすごくよくて、テクノ調の音楽が心を熱く切なくさせます。サントラも必聴です。

90年代におけるビックコミックスピリッツの代表作を、これまた素晴らしいクオリティで映画化できた希有な作品です。ただのスポ根ものとは一線を画す独特の空気感が今でも色あせないのは流石ですね。ただ、全体的に台詞が聞き取りにくいのは邦画の一般的な仕様ですか？これが結構興醒めなのが凄く残念です。

原作の味わいを充分に生かしながら、かつ、映画として、もう一段昇華した作品となっている。

コミックのアニメ化は一般に非常に難しく、その失敗例は枚挙に暇がないが、この作品については、間違いなく成功例だと思う。

というか、個人的には、これほどの成功例は未だかつて目にしたことがない。

それもひとえに、監督をはじめ、スタッフ、そして声優たちによる、原作に対する深い理解の賜物であろうと推察される。

あのクロが、あのシロが、決して原作のイメージを崩されることなく、生き生きとスクリーン上を飛び回る。

クロとシロの痛みが、苦悩が、そして喜びが、その全てが、より如実に、よりありありと伝わってくる。

宝町の猥雑さも、その他の個性的な登場人物たちも、見事にそのままに映し出されている。

心配だった暴力シーンは、原作よりは抑えた表現になっていた。

特筆すべきは、シロを演じた蒼井優の好演。

特に、クロと引き離される時の、パトカーの中からクロをなじる叫び、あれはまさしくシロそのものだった。

映像の絢爛さを味わうだけでも観る価値のある、優れたアニメ作品だと思う。

一言、一言、言葉の重みを感じます…。
いつも傍に置いてます!!

この作品を奔放に行き交う少年たちの無垢は、（表紙のじゅんに分かるように）洗練されていない危うさと、だからこそ表出する嘘のない感情・感覚を体現しています。どうしてこんなにも胸に迫るのか。ざわつくのか。松本大洋の切り取る一コマ一コマが、松本大洋の引く輪郭が、その線が、ずっと昔に忘れた景色と感情とを刺激します。少年達の見る、感じる世界が作品全体の景色に、言葉に現れて、彼らの表情は真実で、彼らの言葉が僕等のものでもあったということを思い出しました。
自分たちが子供であった事、今は大人である事、無垢を奪われた事、無垢を脱ぎ捨てた事、彼らの無垢が実在する事、彼らの剥き出しの無垢が損なわれている事、彼らがそれを必死に守っている事を再認識し、感情が穏やかに、それでいて確かに揺さぶられていきます。全体の底流にある淋しさを彼らの笑顔の裏に読む事ができる。すごい作品です。

惜しむらくは、松本大洋が若い世代から距離のある大作家でありすぎるということ。彼の作品を手にする世代と、本当にこの作品を読んでほしいと思える世代とにギャップがあるということ。大衆受けする作品ではありませんが、求める人を救う作品でもあります。少年漫画の王道を行くような冒険物の裏側に、感情の現実、行き場のない無垢を受け止める作品があることを、若い世代に知ってほしい。この作品を読む事ができる現実に感謝しながら、その静かで力強い表現にそんなことを思わずにはいられませんでした。