ボロディン:歌劇「イーゴリ公」映画版 [DVD]
ジャケットの写真は「猿の惑星」みたいですが中身は本当に素晴らしいです。オペラは総合芸術なので、歌と演奏が良くても演出が気に入らないとか、歌手が役のイメージに合わないとか、細かいことを言い出すと完璧な上演に巡り合うのは難しいと思います。その点、オペラ映画は俳優と歌手を分けられるし、ロケも自由にできる点が良いと思うのですが、私としてはこの映画は100点、申し分のない出来だと思います。
歌手もオーケストラもいいのですが、口パク(?)で演じている俳優さんたちがイメージ通りで、イーゴリは雄々しくカッコ良く、ヤロスラヴナは美しく気高く、コンチャクは敵ながら天晴な武将で、ウラジーミルは少し頼りなく、コンチャコヴナはエキゾチックに、実によくはまっています。何よりいいのはロケと舞台装置で、中世ロシアの城塞都市や、ポロヴェッツ人の根拠地であるステップ地帯の広大な風景、そして彼らの天幕生活や衣装などが良く再現されていて、その雰囲気と迫力はオペラ上演では望むべくもないものです。時代考証を手掛けたのがソ連時代を代表する偉大なロシア文化史家、ドミトリー・リハチョフですからそれも当然かもしれません。有名な「韃靼人の踊り」も素晴らしいバレエの振り付けで、当時のソ連芸術界の底力と気合を感じさせる作品に仕上がっています。
原曲に比べると、省略された部分がある一方で、プチヴリが攻撃を受ける場面では反撃の様子が強調されていますし、最後に付け加わったイーゴリの再出陣の場面では、兵士は笑顔で出陣し、合唱は「軍に栄光あれ」との歌詞で終わっています。「愛国的」なストーリーに仕上がっているのはブレジネフ時代の空気を反映したものかと思いますが、アジア系のポロヴェッツ人との戦いに出陣していくロシア兵の姿に、映画ができた1969年にあった中ソ国境衝突の影を見てしまうのは私の勘繰り過ぎでしょう。確かに画質・音質は決してよくありませんが、それを差し引いても見ごたえ十分。是非多くの方にご覧いただきたい、素晴らしい作品です。
歌手もオーケストラもいいのですが、口パク(?)で演じている俳優さんたちがイメージ通りで、イーゴリは雄々しくカッコ良く、ヤロスラヴナは美しく気高く、コンチャクは敵ながら天晴な武将で、ウラジーミルは少し頼りなく、コンチャコヴナはエキゾチックに、実によくはまっています。何よりいいのはロケと舞台装置で、中世ロシアの城塞都市や、ポロヴェッツ人の根拠地であるステップ地帯の広大な風景、そして彼らの天幕生活や衣装などが良く再現されていて、その雰囲気と迫力はオペラ上演では望むべくもないものです。時代考証を手掛けたのがソ連時代を代表する偉大なロシア文化史家、ドミトリー・リハチョフですからそれも当然かもしれません。有名な「韃靼人の踊り」も素晴らしいバレエの振り付けで、当時のソ連芸術界の底力と気合を感じさせる作品に仕上がっています。
原曲に比べると、省略された部分がある一方で、プチヴリが攻撃を受ける場面では反撃の様子が強調されていますし、最後に付け加わったイーゴリの再出陣の場面では、兵士は笑顔で出陣し、合唱は「軍に栄光あれ」との歌詞で終わっています。「愛国的」なストーリーに仕上がっているのはブレジネフ時代の空気を反映したものかと思いますが、アジア系のポロヴェッツ人との戦いに出陣していくロシア兵の姿に、映画ができた1969年にあった中ソ国境衝突の影を見てしまうのは私の勘繰り過ぎでしょう。確かに画質・音質は決してよくありませんが、それを差し引いても見ごたえ十分。是非多くの方にご覧いただきたい、素晴らしい作品です。
ボロディン:歌劇《イーゴリ公》 マリインスキー劇場版 [DVD]
「だったん人の踊り」で有名な歌劇『イーゴリ公』の全幕ライヴ映像です。
ゲルギエフ指揮、マリインスキー歌劇場の演奏とバレエで1997年8月に上演されました。
同じくゲルギエフの全曲盤CDとくらべると、 「だったん人の娘たちの踊り」、「だったん人の踊り」の一部をはじめ、 いくつかの場面が短縮、または省略された簡略版ではありますが、 CDの歌詞やト書きからはわからない演技や演出が楽しめます。
マリインスキー劇場の『イーゴリ公』はリムスキー-コルサコフが補遺した初演版ではなく、ファリエクの校訂によって構成と演出を変えた版が使われています。
初演版ではイーゴリ公の帰還をプチーヴリの人々が 歓迎して大団円となりますが、 この新版では、イーゴリの再度の出陣を暗示して終わります。
2008年のマリインスキー歌劇来日公演を先取してお楽しみください!
ゲルギエフ指揮、マリインスキー歌劇場の演奏とバレエで1997年8月に上演されました。
同じくゲルギエフの全曲盤CDとくらべると、 「だったん人の娘たちの踊り」、「だったん人の踊り」の一部をはじめ、 いくつかの場面が短縮、または省略された簡略版ではありますが、 CDの歌詞やト書きからはわからない演技や演出が楽しめます。
マリインスキー劇場の『イーゴリ公』はリムスキー-コルサコフが補遺した初演版ではなく、ファリエクの校訂によって構成と演出を変えた版が使われています。
初演版ではイーゴリ公の帰還をプチーヴリの人々が 歓迎して大団円となりますが、 この新版では、イーゴリの再度の出陣を暗示して終わります。
2008年のマリインスキー歌劇来日公演を先取してお楽しみください!