チャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲
最近、日本の演奏会で、ショスタコーヴィチのヴァイオリン協奏曲第1番が演奏される機会が増えて居る。当然であろう。この曲は、ショスタコーヴィチの最高傑作であるばかりではなく、ベートーヴェンやブラームスのヴァイオリン協奏曲にも比肩する、20世紀音楽の最高傑作の一つである。この曲が演奏される回数が増えて居る事を、私は、心から喜ぶものである。私は、昨年(平成16年=2004年)、このCDのヴァイオリニスト、渡辺玲子さんが、東京文化会館で、東京都交響楽団と、ショスタコーヴィチのこのヴァイオリン協奏曲第1番を演奏するのを聴いた。--最高の演奏であった。--このヴァイオリン協奏曲を愛してやまない私は、この曲が演奏される演奏会には、可能な限り足を運んで、生の演奏を聴くのを楽しみにして来た。しかし、残念ながら、多くの場合、私は、それらの演奏に、失望を感じる事が多かった。その私が、初めて、何の不満も感じずにこの曲を生演奏で聴き通したのは、その夜の渡辺玲子さんの演奏が、初めてであった。それどころではない。私は、渡辺玲子さんのその演奏に、本当に、圧倒されたのであった。--このCDは、その渡辺玲子さんが、ドミトリエフ指揮のサンクト・ペテルブルグ交響楽団と、この曲を演奏した録音のCDである。一緒に収められたチャイコフスキーも、もちろん素晴らしいが、とにかく、このショスタコーヴィチを聴いて欲しい。ムローヴァやコーガンの演奏に並ぶ名演である。--渡辺玲子さんの音楽は、いつも、極めて理知的であるが、彼女のそうした特質が、このヴァイオリン協奏曲の、シェイクスピア的とも呼ぶべき精神と見事に共鳴し合って居る。--このヴァイオリン協奏曲が、いかに偉大な傑作であるか、そして、このヴァイオリニストが、いかに素晴らしいヴァイオリニストであるかが、必ずお分かり頂ける筈である。(西岡昌紀)
カラスなぜ啼く、なぜ集う 探偵作家クラブ渡辺啓助会長のSF的生涯
弟・渡辺温があまりにも短い人生だった分、兄・渡辺啓助は堂々101歳の長寿を全うした。
本書はその一生を追ったものだが、帯における「薔薇と悪魔の詩人」なる呼び名には何も異論はないけれど、
書名副題「探偵作家クラブ会長のSF的生涯」ってどうなの?
確かに日本探偵作家クラブの4代目会長を務めたし戦後日本SFの世話役としても貢献したが、渡辺啓助という人の看板はそこじゃないだろう。
書名にしても鴉(カラス)は彼の代名詞だけど、もう少し気の利いたタイトルはなかったのか。
内容は作品論というより未読者にわかり易いようなバイオグラフィーと作品紹介の趣き。但し全作品リストとか著書目録とかコンプリートな形では提示されてはいない。
昭和50年代以降に出た著書で復刻されていない作品が数多くあるので、第二〜三章での戦時下/戦後作品案内はビギナーでなくとも有難い。
小説だけでなく『B』『鴉』といった同人誌での活動、没後における啓助四女の画家・渡辺東や新青年研究会を中心とした
啓助に関するイベント・刊行物の動き等も正しくフォローされているのは良かった。「吸血劇場」と「処女獣」のテキスト異同・初出情報など書誌ネタも面白い。
著者の天瀬裕康・渡辺玲子夫妻は、文中の語り口調を整理統一した方が読みやすかったと思う。
渡辺啓助を初めて読むなら、何はなくともまず初期の傑作短編「偽眼のマドンナ」「佝僂記」「美しき皮膚病」
「血笑婦」等を集めた怪奇探偵小説名作選2『地獄横丁』(ちくま文庫)が最適。
幻想系なのでどうしても短編のほうが出来が良いのだが、前述の「吸血劇場」といった中〜長篇も
最近流行の同人出版でかまわないから読めるようになってほしい。
本書はその一生を追ったものだが、帯における「薔薇と悪魔の詩人」なる呼び名には何も異論はないけれど、
書名副題「探偵作家クラブ会長のSF的生涯」ってどうなの?
確かに日本探偵作家クラブの4代目会長を務めたし戦後日本SFの世話役としても貢献したが、渡辺啓助という人の看板はそこじゃないだろう。
書名にしても鴉(カラス)は彼の代名詞だけど、もう少し気の利いたタイトルはなかったのか。
内容は作品論というより未読者にわかり易いようなバイオグラフィーと作品紹介の趣き。但し全作品リストとか著書目録とかコンプリートな形では提示されてはいない。
昭和50年代以降に出た著書で復刻されていない作品が数多くあるので、第二〜三章での戦時下/戦後作品案内はビギナーでなくとも有難い。
小説だけでなく『B』『鴉』といった同人誌での活動、没後における啓助四女の画家・渡辺東や新青年研究会を中心とした
啓助に関するイベント・刊行物の動き等も正しくフォローされているのは良かった。「吸血劇場」と「処女獣」のテキスト異同・初出情報など書誌ネタも面白い。
著者の天瀬裕康・渡辺玲子夫妻は、文中の語り口調を整理統一した方が読みやすかったと思う。
渡辺啓助を初めて読むなら、何はなくともまず初期の傑作短編「偽眼のマドンナ」「佝僂記」「美しき皮膚病」
「血笑婦」等を集めた怪奇探偵小説名作選2『地獄横丁』(ちくま文庫)が最適。
幻想系なのでどうしても短編のほうが出来が良いのだが、前述の「吸血劇場」といった中〜長篇も
最近流行の同人出版でかまわないから読めるようになってほしい。