雲の墓標 (新潮文庫)
もう数回目に購入し、読み返して見ても名著である。著者の実体験なのか小説としての読み物なのか?いずれにしても、こんな時代があったのだ、比較して今日の平和が信じられない。何時になっても読み続けていかれるべき著作と思う。
山本五十六 (上巻) (新潮文庫)
黒澤明が執筆した「トラ・トラ・トラ!」準備稿の原作にあたる評伝です。山本五十六の人間くさい人物像は、だいたいこの本に記載されたエピソードからとられているようです。残念ながら完成した映画の五十六像に、その片鱗はほとんど残っていませんが・・・。上巻で描かれるロンドン軍縮会議で米英との戦争回避を訴えるあたりが特に面白い。近しい女性や友人たちに書き送った手紙の数々がユーモラスであったり何ともいえず人間的な魅力を感じさせる。ただ下巻の真珠湾攻撃、ミッドウェイ海戦と進むと五十六の人物像に精彩が無くなってくる。なにかすごく影が薄い。作者は、山本五十六を肯定的にとらえたいがために遠慮があるのか?開戦後は、実際は影が薄かったというのが実像だったのか?いずれにしても描き方に物足りない印象が残る。