幻肢
前略 島田先生
サイン会、お疲れ様でした。相変わらずお元気そうで何よりです。アジアに、また世界に向けて作品を発表しつつ、世界各地での新たな才能発掘に尽力される前向きな姿勢には敬服するばかりです。益々のご活躍を祈念しています。
さて、本作「幻肢」について、です。
主人公は交通事故で大きな怪我をし、一時的に記憶を失います。治療と共に徐々に記憶を取り戻すものの、事故当時の状況はどうしても思い出せません。主治医と主人公は、磁気刺激治療(TMS)という新たな治療法を使い、発症したうつ病の治癒に努めるのですが、治療と共に恋人の幻を視るようになり、少しずつ封印された記憶が呼び起されていきます……。
いつもながらの、時に強引ながら、「やられた!」という爽快なサプライズを期待しつつ読んだのですが、良心的なヒントが各所に提示されているだけに、正直に言えば最後まで大きな驚きはありませんでした。「幻肢」や「心霊現象」が起きる心理的な作用機序についての仮説や、ペンフィールドのホムンクルス、TMSを使って主人公が踏み込んでいく、危うい幻の世界、日本の医療・投薬システムに対する批判など、島田先生らしく楽しめる読める部分は随所にあったものの、同じく交通事故にかかわるミステリーで、結末や読後感で読者の意見が分かれている「秘密」(東野圭吾先生)に比較すると、やや予定調和的な印象です。映画のための書下ろしとのことですので、やむを得ないのかもしれませんが、「初の映画化作品」=「映画の精巧なノベライズ作品」になっている印象です。リアリティを追求するミステリーとして読む立場からすると、「警察の現場検証はどうなったんだろう?」などと余計な心配までしてしまいます。
とは言え、サプライズを追求した「ラブ・ミステリー」としてではなく、ミステリアスな愛の行方を見守る「ミステリアス・ラブストーリー」として手に取る方なら、主人公の心理に同調し、十分に楽しめると思います。また、映画館で映像として観ると、より楽しめるようにも思えます。個人的には、本作品のBGM・映像は、どちらかと言えば平井堅さんの「瞳をとじて」の音楽・プロモーションビデオのイメージですが。
次作はまた、サプライズを追求したミステリーを期待しています。どうぞ、お体に気をつけて。今冬の成城大学での講演も楽しみに待っています。
草々
平成二十六年九月七日
一人のファンより
サイン会、お疲れ様でした。相変わらずお元気そうで何よりです。アジアに、また世界に向けて作品を発表しつつ、世界各地での新たな才能発掘に尽力される前向きな姿勢には敬服するばかりです。益々のご活躍を祈念しています。
さて、本作「幻肢」について、です。
主人公は交通事故で大きな怪我をし、一時的に記憶を失います。治療と共に徐々に記憶を取り戻すものの、事故当時の状況はどうしても思い出せません。主治医と主人公は、磁気刺激治療(TMS)という新たな治療法を使い、発症したうつ病の治癒に努めるのですが、治療と共に恋人の幻を視るようになり、少しずつ封印された記憶が呼び起されていきます……。
いつもながらの、時に強引ながら、「やられた!」という爽快なサプライズを期待しつつ読んだのですが、良心的なヒントが各所に提示されているだけに、正直に言えば最後まで大きな驚きはありませんでした。「幻肢」や「心霊現象」が起きる心理的な作用機序についての仮説や、ペンフィールドのホムンクルス、TMSを使って主人公が踏み込んでいく、危うい幻の世界、日本の医療・投薬システムに対する批判など、島田先生らしく楽しめる読める部分は随所にあったものの、同じく交通事故にかかわるミステリーで、結末や読後感で読者の意見が分かれている「秘密」(東野圭吾先生)に比較すると、やや予定調和的な印象です。映画のための書下ろしとのことですので、やむを得ないのかもしれませんが、「初の映画化作品」=「映画の精巧なノベライズ作品」になっている印象です。リアリティを追求するミステリーとして読む立場からすると、「警察の現場検証はどうなったんだろう?」などと余計な心配までしてしまいます。
とは言え、サプライズを追求した「ラブ・ミステリー」としてではなく、ミステリアスな愛の行方を見守る「ミステリアス・ラブストーリー」として手に取る方なら、主人公の心理に同調し、十分に楽しめると思います。また、映画館で映像として観ると、より楽しめるようにも思えます。個人的には、本作品のBGM・映像は、どちらかと言えば平井堅さんの「瞳をとじて」の音楽・プロモーションビデオのイメージですが。
次作はまた、サプライズを追求したミステリーを期待しています。どうぞ、お体に気をつけて。今冬の成城大学での講演も楽しみに待っています。
草々
平成二十六年九月七日
一人のファンより
少女たちの羅針盤 (2枚組) [DVD]
女子高生演劇集団「羅針盤」の青春ストーリーがあまりにも素晴らしため どーしても陳腐なミステリー部分と解離しているように思えて仕方ない。
特にラストの謎解きシーンは まるでテレビの二時間ドラマのよう…。
それでもこの映画を高く評価するのは 4人の少女たちの青春の輝きに魅せられてしまったから。
どうやら成海璃子の映画にハズレはないようで…。 特典デスクには 劇中劇「生死のサカイ」がフルバージョンで収録。 手元に置いて損はないですよ。
特にラストの謎解きシーンは まるでテレビの二時間ドラマのよう…。
それでもこの映画を高く評価するのは 4人の少女たちの青春の輝きに魅せられてしまったから。
どうやら成海璃子の映画にハズレはないようで…。 特典デスクには 劇中劇「生死のサカイ」がフルバージョンで収録。 手元に置いて損はないですよ。
占星術殺人事件 改訂完全版 (講談社文庫)
推理小説の最高傑作でしょうね。警察官の告発が途中ででてきます。ここがポイントでこの章を読み終わっても犯人がわからない場合は迷宮入りですね。
「ん?」って思うかどうか、それが全てです。
しかしkindle版、高すぎませんか?
「ん?」って思うかどうか、それが全てです。
しかしkindle版、高すぎませんか?
星籠の海 上
面白いのは面白い。一気呵成に読める。
瀬戸内海に流れる死体の謎、水軍の秘密兵器とは? 怪しげな宗教団体(教祖の名前から出身国が分かるので、どの宗教団体をモデルにしているかもすぐ分かる)などなど、かなり盛りだくさん。
それゆえ、御手洗は、手際良く、悩むことなく「謎」をどんどん解決していく。石岡君がついていけなくても関係ない。専門の歴史学者が悩む問題にさえ、道筋をつけていく。
ただ、ミステリーとして考えると、本質的な「謎」は一つだけ。
水軍の秘密兵器は簡単に想像がつくし、オチも予測できないわけではない。
それでも、こういった枠組みの大きなミステリーを書ける人があまりいない現在、氏の著作の力強さは際立つ(社会的なネタでも、枠組みを大きくできない作家は少なくない)。
また、今回のように著者の出身地(広島)あたりを舞台にした作品には、地域性といった独特の魅力も存在する。
瀬戸内海に流れる死体の謎、水軍の秘密兵器とは? 怪しげな宗教団体(教祖の名前から出身国が分かるので、どの宗教団体をモデルにしているかもすぐ分かる)などなど、かなり盛りだくさん。
それゆえ、御手洗は、手際良く、悩むことなく「謎」をどんどん解決していく。石岡君がついていけなくても関係ない。専門の歴史学者が悩む問題にさえ、道筋をつけていく。
ただ、ミステリーとして考えると、本質的な「謎」は一つだけ。
水軍の秘密兵器は簡単に想像がつくし、オチも予測できないわけではない。
それでも、こういった枠組みの大きなミステリーを書ける人があまりいない現在、氏の著作の力強さは際立つ(社会的なネタでも、枠組みを大きくできない作家は少なくない)。
また、今回のように著者の出身地(広島)あたりを舞台にした作品には、地域性といった独特の魅力も存在する。
少女たちの羅針盤 Blu-ray (特典DVD付2枚組)
[ ※2012.1.20に投稿したDISCASレビューを転載または一部編集した ]
四人の少女全員均等に焦点をあてたシナリオはよくできてる。舞台劇が好きな人なら満足度は高いだろう。それぞれ傷を抱えた同志的友情は深度が感じられた。ミステリーが加味されているが、舞台劇ぽく捉えると友情を炙り出す方向でよく効いている。劇中劇も結構興味を惹きつける力があるし、ライターはそちらが本職じゃないのかな。
主役クラスの成海璃子は、本作と「武士道シックスティーン」しか観てないせいか、演技傾向が鈴木杏とかぶる。すべり気味すれすれの熱演はコメディタッチでおもしろい。
忽那汐里は徐々に巧くなっているのが感じられて嬉しいね。終盤のブランコシーンや謎解きシーンなど、好きだからか余計よく見えた。
森田彩華は一見屈託無く見えて陰のある男前少女を上手に演じていた。四人の中で三つか四つは年長だし一番巧かったかな。ヘアスタイルなど一時期の上戸彩(オスカーの先輩後輩関係でドラマでも何度か共演してる)を意識してるのかなとつい思ってしまう。
(端役じゃなく)メインの役を演ずる草刈麻有は初めて観たが好い役をもらったね。可愛いだけじゃないんだ。お父さんより巧くなりそう(爆)
※レーティングは、A+,A,A->B+,B,B->C+,C,C- の9段階。
四人の少女全員均等に焦点をあてたシナリオはよくできてる。舞台劇が好きな人なら満足度は高いだろう。それぞれ傷を抱えた同志的友情は深度が感じられた。ミステリーが加味されているが、舞台劇ぽく捉えると友情を炙り出す方向でよく効いている。劇中劇も結構興味を惹きつける力があるし、ライターはそちらが本職じゃないのかな。
主役クラスの成海璃子は、本作と「武士道シックスティーン」しか観てないせいか、演技傾向が鈴木杏とかぶる。すべり気味すれすれの熱演はコメディタッチでおもしろい。
忽那汐里は徐々に巧くなっているのが感じられて嬉しいね。終盤のブランコシーンや謎解きシーンなど、好きだからか余計よく見えた。
森田彩華は一見屈託無く見えて陰のある男前少女を上手に演じていた。四人の中で三つか四つは年長だし一番巧かったかな。ヘアスタイルなど一時期の上戸彩(オスカーの先輩後輩関係でドラマでも何度か共演してる)を意識してるのかなとつい思ってしまう。
(端役じゃなく)メインの役を演ずる草刈麻有は初めて観たが好い役をもらったね。可愛いだけじゃないんだ。お父さんより巧くなりそう(爆)
※レーティングは、A+,A,A->B+,B,B->C+,C,C- の9段階。