せどり男爵数奇譚 (ちくま文庫)
~古書に限らず、マニアックなものには様々数奇な人生譚がつきまとう。
面白可笑しく、時には歯がゆく物悲しい。
古書蒐集や、その周辺に関わる仕事が止められなくなるのは、そういうものを
引っ括めて魅力となってるからなのかもしれない。
そしてそれがあまりにも過ぎると、犯罪の方に片足(もしくは腰までズブズブと)
浸かってしまう事もあるのだろ~~うが、心の底から憎むことができないのは、「気持ちは分からんでもない」という心理がどこかであるからなんだろう。
この『せどり男爵数奇譚』はそんなことを考えながら読んでしまう本である。
古書が関わってくるストーリーだからといって、話題が古書の蘊蓄だけに終始してる
と思うなかれ。
「古書なんてわかんないし、そういうマニアな世界はとんと~~理解出来ない」という方にも読んで欲しいと思う一冊。
久々にドラマティックに脳を働かせる読書をいたしました。~
面白可笑しく、時には歯がゆく物悲しい。
古書蒐集や、その周辺に関わる仕事が止められなくなるのは、そういうものを
引っ括めて魅力となってるからなのかもしれない。
そしてそれがあまりにも過ぎると、犯罪の方に片足(もしくは腰までズブズブと)
浸かってしまう事もあるのだろ~~うが、心の底から憎むことができないのは、「気持ちは分からんでもない」という心理がどこかであるからなんだろう。
この『せどり男爵数奇譚』はそんなことを考えながら読んでしまう本である。
古書が関わってくるストーリーだからといって、話題が古書の蘊蓄だけに終始してる
と思うなかれ。
「古書なんてわかんないし、そういうマニアな世界はとんと~~理解出来ない」という方にも読んで欲しいと思う一冊。
久々にドラマティックに脳を働かせる読書をいたしました。~
族譜・李朝残影 (岩波現代文庫)
『族譜』は創氏改名がどのように受け止められたのか、について、半島の人々の息づかいを感じるような生々しさで描いています。
日本人名をつけさせる。
日本の神を祀る。
向こうにとって実害が少なそうで、その実、多大な怨みだけ募らせた窮極の官僚的な愚策。
今から見ると、滑稽で何がしたかったのかよくわからないものですが、実に下らないことをやっていたのだなぁ……と茫漠たる恥ずかしさを感じました。
ただ……それと同時に、(国家なんてどこでもこんなものだ……)というあきらめのようなものも感じました。
相応の怨みを受けて当然であり、同時にそういったものを受け入れざるを得なかった彼らの弱さ、無能さもあり……
親鸞の言う「業縁」という言葉について、考えさせられました。
『李朝残影』は小説として、技術的にうまいと感じました。
それだけでなく……当時の朝鮮の生活が細かく描かれていて、味わい深い作品でした。
『性欲のある風景』も生々しさがいい。
三作品いづれも、日本と朝鮮半島間だけのことではなく、人間の中の普遍的なものを描いていると思いました。
十分、世界的な作品だと思います。
日本人名をつけさせる。
日本の神を祀る。
向こうにとって実害が少なそうで、その実、多大な怨みだけ募らせた窮極の官僚的な愚策。
今から見ると、滑稽で何がしたかったのかよくわからないものですが、実に下らないことをやっていたのだなぁ……と茫漠たる恥ずかしさを感じました。
ただ……それと同時に、(国家なんてどこでもこんなものだ……)というあきらめのようなものも感じました。
相応の怨みを受けて当然であり、同時にそういったものを受け入れざるを得なかった彼らの弱さ、無能さもあり……
親鸞の言う「業縁」という言葉について、考えさせられました。
『李朝残影』は小説として、技術的にうまいと感じました。
それだけでなく……当時の朝鮮の生活が細かく描かれていて、味わい深い作品でした。
『性欲のある風景』も生々しさがいい。
三作品いづれも、日本と朝鮮半島間だけのことではなく、人間の中の普遍的なものを描いていると思いました。
十分、世界的な作品だと思います。
赤いダイヤ〈上〉 (集英社文庫)
昭和36年、週刊誌のトップ屋を辞めて結核の療養中であった梶山季之が、ひょんなことからスポーツ紙に連載をはじめたこの小説は、赤いダイヤと呼ばれた小豆の相場を巡ってうごめく男女の物語だが、相場という当時およそ小説の舞台にはなりそうもないと思われた特異な世界を取り上げ、しかもその魔力に囚われた人々の欲望を描くという異質な展開で大成功をおさめた。
大衆の喜びそうな面白い小説を書くのは作家としての堕落だといった概念が強かった当時、トップ屋での経験をフルに生かしたこの物語は、かなりの物議をかもしたものの、正に、エンターテイメントを求める大衆にとっては待望の作品と評価されたと言って良い。
借金地獄に追い込まれた主人公木塚慶太は、海に身を投げたが、希代の相場師である档玄一郎に救われる。その森玄が買方として、又、大物相場師で取引所の理事長を務める松崎辰治が売り方の総帥として命をかけて取組んでいたのが小豆相場だ。木塚慶太も、そのあこがれの女性である井戸美子もこの魔物といわれた相場に引き込まれていく。
息をつかせぬ相場展開、騙し騙されの男女関係、詐欺師あり、人情ありとエンターテイメント要素に溢れている。
梶山季之の作家としてのデビュー作に近い作品だが、彼の最高傑作と評価する人も多いようだ。
大衆の喜びそうな面白い小説を書くのは作家としての堕落だといった概念が強かった当時、トップ屋での経験をフルに生かしたこの物語は、かなりの物議をかもしたものの、正に、エンターテイメントを求める大衆にとっては待望の作品と評価されたと言って良い。
借金地獄に追い込まれた主人公木塚慶太は、海に身を投げたが、希代の相場師である档玄一郎に救われる。その森玄が買方として、又、大物相場師で取引所の理事長を務める松崎辰治が売り方の総帥として命をかけて取組んでいたのが小豆相場だ。木塚慶太も、そのあこがれの女性である井戸美子もこの魔物といわれた相場に引き込まれていく。
息をつかせぬ相場展開、騙し騙されの男女関係、詐欺師あり、人情ありとエンターテイメント要素に溢れている。
梶山季之の作家としてのデビュー作に近い作品だが、彼の最高傑作と評価する人も多いようだ。