落城・足摺岬 (新潮文庫)
収録作品は以下のとおりです。
「落城」
「末期の水」
「かるたの記憶」
「天路遍歴」
「土佐日記」
「絵本」
「足摺岬」
「落城」「末期の水」は、明治維新の際、最後まで徳川への忠誠を尽くし、政府軍との戦いに敗れた、著者創作の東北小藩の悲劇を、感情を排した文章で描いた作品。壮絶な悲劇美。
「かるたの記憶」「絵本」「足摺岬」は私小説風で、兄ばかりを偏愛する父親と次男の関係、東京での下宿生活の中、同宿する中学生や下宿の病身の少年との交流、そして自殺を決意して足摺岬に行き、お遍路さんとの出会いによる魂の救済などを描いています。
特殊な父子関係や昭和初期の時代風潮に押しつぶされていく人たちが暗く哀しいです。
「天路遍歴」は、空襲で焼け出された老人がかつての知人の家を訪ねてずるずると居つく姿を描き、これもどこか哀れ。
「土佐日記」は、明治時代の高知を舞台にした大地主の娘の一代記。母、父、夫、息子たちとの愛憎と家の没落を描いています。
いずれの作品も独特の暗く哀しいトーンに貫かれていて読み応えがあります。お薦めできる文庫です。
「落城」
「末期の水」
「かるたの記憶」
「天路遍歴」
「土佐日記」
「絵本」
「足摺岬」
「落城」「末期の水」は、明治維新の際、最後まで徳川への忠誠を尽くし、政府軍との戦いに敗れた、著者創作の東北小藩の悲劇を、感情を排した文章で描いた作品。壮絶な悲劇美。
「かるたの記憶」「絵本」「足摺岬」は私小説風で、兄ばかりを偏愛する父親と次男の関係、東京での下宿生活の中、同宿する中学生や下宿の病身の少年との交流、そして自殺を決意して足摺岬に行き、お遍路さんとの出会いによる魂の救済などを描いています。
特殊な父子関係や昭和初期の時代風潮に押しつぶされていく人たちが暗く哀しいです。
「天路遍歴」は、空襲で焼け出された老人がかつての知人の家を訪ねてずるずると居つく姿を描き、これもどこか哀れ。
「土佐日記」は、明治時代の高知を舞台にした大地主の娘の一代記。母、父、夫、息子たちとの愛憎と家の没落を描いています。
いずれの作品も独特の暗く哀しいトーンに貫かれていて読み応えがあります。お薦めできる文庫です。
足摺岬 (講談社文芸文庫)
密度の濃い小説集です。田宮虎彦を初めて読みましたが,一言でいって,暗いです。主人公は希望もなく滅ぶばかりです。
たとえば「足摺岬」では「滅び行くものの寂しさの故の悲しさ」とか「おのれだけに秘めている悲しみ」など,寂しさ,悲しさの表現が連発されています。読者はそれらを共有することを求められます。
「足摺岬」は文学史に残る小説といわれているようで,本書収録の「霧の中」なども,読むべき作品であると思います。ただ,さまざまな感情の表現が,僕自分の「好み」ではありませんでした。作品を読んで,なぜか詩人の石原吉郎の詩を思い出しました。
いずれにしても,昭和時代のあまり読まれなくなった文学者の作品が,「滅ぶ」ことなく世に出ていることがありがたいと思います。
たとえば「足摺岬」では「滅び行くものの寂しさの故の悲しさ」とか「おのれだけに秘めている悲しみ」など,寂しさ,悲しさの表現が連発されています。読者はそれらを共有することを求められます。
「足摺岬」は文学史に残る小説といわれているようで,本書収録の「霧の中」なども,読むべき作品であると思います。ただ,さまざまな感情の表現が,僕自分の「好み」ではありませんでした。作品を読んで,なぜか詩人の石原吉郎の詩を思い出しました。
いずれにしても,昭和時代のあまり読まれなくなった文学者の作品が,「滅ぶ」ことなく世に出ていることがありがたいと思います。