「とにかく好きになって、観察して、どうにか近づきたくてやっている。その延長線上でものまね芸になっているわけです。趣味かと聞かれれば『そうです!』と即答するしかありません」。
美川憲一、岩崎宏美、五木ひろし、
田中邦衛、ちあきなおみ、野口五郎、浜崎あゆみ、田原俊彦、ゾウリムシ、他。
コロッケのものまねのレパートリーは実に広い。しかも、同じ人であっても年々内容を変えて進化させているという。そのコツや、アイディアや、ものまねの技術や心構えや考え方といったことについて語った本。
「人間の能力は、実際には思うほどの差はなくて、情報をどう集め、どう処理し、どう生かし、どう継続するか、そこで差が付くのだろうと思います」。
とても真面目に書かれている。第一印象や先入観に左右されずに観察する。そこからインスピレーションの芽や思わぬ発見やひらめきを得る。次いで、洞察力によって観察したものを分析し、自分が取り込みたい部分を得てゆく。芸能界では、番組で快活に喋っていても実際は無口なタイプの人が意外に多く、そういう無口な人は観察上手でその観察力が彼らのトークを支えている、と述べているところもある。
まねされている人に対するフォローは忘れない。オンとオフを切り替える。気になったあの瞬間をやってみたくてネタにする。聞かれ上手になる。境界線や制約を「引き」の部分として、独自性の「押し」の部分とのバランスを上手くとることで独自のカラーを生む。不細工のような欠点を武器にすることで幅を生む。謙虚にうぬぼれる。人間関係を継続する。小心者だから、飽きられないように工夫を続ける。お客さんを一番に考える。
最後に、著者が大切にしている心構えとして、「気付くか、気付かないか」「やるか、やらないか」「できるか、できないか」の3つをあげている。
コロッケらしくない真面目な本になってしまった、という照れのようにも読めることも書かれてあるが、伝えたいメッセージは語りつくしたという。売れるまでのことや、いろいろなエピソードも交えている。各章のおさらいの部分にモノマネの写真があって、笑わせてくれる。興味深く読むことができた。