砂時計 スタンダード・エディション [DVD]
杏を「おれが守っちゃる」と大悟が言った。
私には、ヒロインの杏より
とにかくひたむきな大悟の愛が胸を打った。
杏はどちらかというと、悲しさより今っぽい笑顔が光る。
そのせいか、田舎純情の大悟の方が、俺好きじゃ。
テーマの砂時計のように、
人間は過去にも戻ることもあるし
やり直しもできる。
ちょっと古い感じのする恋愛ドラマでありました。
K後継―流通革命・男たちのドラマ
自分の信念と良心を貫くことによって職場に巻き起こされる葛藤を描いて感動的です。会社や上司に対して真の意味での誠意を尽くすことが、どれほどの苦難に満ちているか、実体験をした人でなければ書けないと思われる苦渋のドラマが胸を打ちます。最近のベストセラーにつきものの派手な仕掛けやラブシーンはありませんが、中盤からは、骨太な主人公の性格にどっぷりと感情移入、いっきに感動の終幕まで読み進んでしまいました。上司に求められて捧げ尽くした忠誠が、他でもない求めた上司本人によって曲解され裏切られていくという悲劇は、程度の差こそあれ、どんな職場にもつきものでしょうが、そうした悲劇を描いて読者の深い共感を呼ぶ作品だと思います。余談ながら、会社上場に前後する場面の具体性は、小説で読む「会社上場入門」のおもむきもあり、経営の勉強にもなります。武骨な文体が、小手先の技術を超えて普遍的な感動を与えてくれる企業小説として、お薦めの一冊です。
東雲楼 女の乱【DVD】
かたせ梨乃、斉藤慶子らをキャストに迎えてお決まりの女郎映画!かと思いきや、
それ以上の出来でした。
監督はベテランの関本郁夫、好色元禄(秘)物語などを手掛けてる娯楽映画の巨匠です!
当時の激動の時代を体を張って生き抜いた女性たちの、哀しくも豪快なこの一作をぜひともご覧になって頂きたいです。
この映画がレンタルビデオで貸出しになってた当時、≪店長おすすめ!≫のレッテルがパッケージに貼られてたのですが
まさにその通り、見て損はないと思います。
今は亡き五社監督の「陽暉楼」や「吉原炎上」が好きな方には特にお勧めです。
鳥越マリ、中野みゆきら、共演陣の色気たっぷりの艶技も見所の一つです。
この映画と同時発売になった写真集を私は持ってるのですがこれもかなりの力作です。
もしヤフオクで出品になってるのを発見しましたら写真集もぜひ入手されることをお勧めします。
大誘拐 RAINBOW KIDS [DVD]
日本映画は主役の人がいかによくても
脇役、エキストラに近い役者が下手だと
セリフが耳に残ってしまい映画に没頭できないので
得意ではない私ですがこの作品は大好き。
コメディだということで、最後まで納得して見れます。
さらっと、重いテーマを盛り込んでたり
作品からあふれる「おもしろい映画を作りきろう!」というエネルギーが
さわやかな気分にさせてくれます。
何度も見直しすぎて、樹木希林さん演じるクラさんのセリフ
物まねができるようになりました。
MW‐ムウ‐ [DVD]
原作が良いせいか面白かったです。
主人公の美貌の殺人鬼を演じる玉木宏さんの存在感は圧巻で、
この方を劇場で観たのは初めてでしたが、
大画面に相応しい迫力と華やかさ、見る者を惹きつける魅力を兼ね備えた
俳優さんで、画面に引き込まれました。
容姿も雰囲気も原作の結城そのもので、漫画の神様の描いた作品が、
30年間息を潜めてこの人の出現を待っていたかの様な、
不思議な感覚を覚えました。
冷酷で無邪気な結城のキャラクターと、彼の美しい容貌と爽やかさが
良く調和していました。
アクションシーンはそれなりに面白いのですが、
作品全体としては手塚治虫が本来描こうとした、テーマ性やメッセージ性が
全く伝わってきませんし、
MW本来の魅力は人間の弱さや愛情にあるので、
原作の最も重要な部分を表現出来ておらず、あまり深みの無い作品となっています。
邦画としては良く出来た作品だと思うのですが、
これが手塚治虫なのかという点においては、NOと言わざるを得ません。
原作で結城が賀来神父と一緒にいるのは、この神父自身がどんな権力にも屈しない
強い意志を持っているから。
自分の人生をかけてでも結城を救おうとする深い愛情があるから。
結城の方もその美しく魅惑的な容姿と、悪魔的な魅力で神父を誘惑しながらも、
全身で彼を愛していて、子犬の様に付きまとっているのがいかにも手塚的で、
そこに確かに作者の意図が見えるのです。
映画版のようにいとも簡単に結城を警察に売ってしまう、
自らの一方的な愛情のために不倶戴天の敵であるはずの
米軍の手で結城を殺そうとする…。
こんな意志の弱いダメ神父と、「人間でなくなった」結城が一緒にいる事に
何の意味があるのか…。
作品の骨格部分がオリジナル作品と似ている点から、表面上は分かりやすく
面白い作品なのですが、内容が薄っぺらいのです。
原作のクライマックスシーンでは結城が自分にとって最も大切なものを
失ったことに気付き、涙をこぼします。
結城は政治悪を中心とした悪の体現者であると同時に、
大国のエゴと戦争の不条理による犠牲者でもあります。
MWの影響により良心を失ったとはいえ、人間にとって最も大切な感情…愛。
これはそのまま残っています。
だからこその賀来神父の最後の決断。彼の人生最後の賭けであり、
贖罪でもあります。
「彼は人間だ!!悪魔にとりつかれた哀れな人間なのだ」
悪いのは結城ではなく、純真で心優しかった彼を変えてしまった戦争にこそあると、
その説明と経緯が描かれていない為に、地球規模だったはずの最終章のスケールが
局地的で小さなものになってしまっています。
この作品に限ったことではありませんが、せっかくの名作も作り手のおかしな趣味や
こだわり…、
明らかにセンスの悪い配役や、本来必要な部分まで削ってしまったことによる、
スケールダウン、矛盾、説明不足で、
台無しになってしまっている部分が多々あります。
恐らく今後これ以上結城に似た俳優さんはもう二度と出てこないと思います。
それだけにどうしてもっと真面目に、真摯に作品に取り組んでくれなかったのか、
それが非常に残念なのです。
作者が実際に何を訴えたかったのか、それが分かっていればこんなアバウトな
配役には絶対にならないはず。
とはいえ、この映画の存在自体を否定する気はありません。
手塚治虫がこんな凄い作品を描いていたんだなあ、
ということも分かりましたし、邦画でもこれだけ迫力のあるアクションシーンが
撮れるんだ、とも思えたからです。