透明の猫と年上の妹 <3LDK-RPG>
ライトな文体、分かりやすい内容。
非常に口当たりがよく、届いたその日に一気に読んでしまいました。
作者は「俺の屍をこえてゆけ」「リンダ」でおなじみの桝田省治氏。
氏の論理的なシナリオ構成と丁寧な伏線はこの本でも健在です。
ややグロテスクな描写もありますが、内容は至って王道。いわゆる「お母さんを助ける為に子供ががんばる」ってやつです。
氏の世界観、人生観、人間観を色濃く反映した一冊だと思います。
王道である以上結末もあるていど予測がつきますが、これでもかというくらいに読者を誤った方向に誘導してくるのでのめりこんで読むことができます。
読み仮名もふってあるので、お子様にも薦められる逸品です。
親子で読まれてみてはいかがでしょうか?
ハルカ 炎天の邪馬台国
古代日本が舞台となるシリーズ第二作。本作が後篇の位置づけ。
前作の舞台となったのは、天空に浮かぶ邪馬台国と魑魅魍魎が行き交う遠い過去の世界。
今作はこれに加えて、現代世界が大きく関わりあいます。展開はよりダイナミックに。
時代と時空、生と死――。越えられる筈のない様々なものを越える中で、前作で提起された「神」に関する謎が再び現れ、幾度となく疑問を生んでいきます。
そんな息も吐かせぬ怒涛の展開の中でも、わずかなページで物語を収束させていく手腕は、見事です。
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前作が出てからしばらく時間が経っているので、まるで記憶が飛んでしまっていましたが、問題なく入り込めるでしょう。二章あたりから予想外の展開があれこれと始まります。
前作のあの人があそこにいたらどうなったか――。
今作の一番の醍醐味は、前作で瞬く間に通り過ぎて行ったキャラクター達の、そういったIFの部分が前面に出ているところ、ここにあるんじゃないかと思います。
物語の重心が現代に移行しても、相変わらずの一貫したスピーディさで、物語は最後まで軽快に進行します。張政も前作よりはモラルがある。というか余計なことしてる暇がないんですね。その分、かなり集中して読めます。
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本作に至って、そこかしこに点在する前作の伏線の軌跡が綺麗に収斂し、ようやく大きな地図が描かれた。そんな印象です。前作を読んだ者からすれば、非常に見事なものです。
意外とページは多いのですが、読むのに時間もかからず、しかもコストパフォーマンスは高いかと思われます。イラスト集つきと言うことで。
前作だけ読んだ場合、モヤモヤしたままになる恐れが高いので、これはまとめて読む事をお勧めします。
リンダキューブ アゲイン
リンダはグロい。リンダは画面がしょぼい。リンダは不親切。リンダは下品。リンダは非倫理的。
いろいろ欠点があると思います。
私の友人の間でも評価は半々、といったところでしょうか。
でも、そんな欠点の数々は、プレイを続けるうちに欠点ではなくなりました。
私はリンダキューブが大好きです。
8年後には確実に滅びる星。順に星を脱出していくため、年を追うごとに減っていく人々。
そんな星に突然落ちてきた箱舟の乗務員となるケンとリンダ。
やることは「動物をできるだけ捕まえて箱舟に乗せ、箱舟を発進させる」
ただ、それだけ。
この設定は変わらないままに、3つのパラレルなシナリオが描かれます。
シナリオ毎に新しい世界が開け、そこで出会う人も街も動物も、気持ちの良いものばかりではありません。
むしろ、さわやかなものなんてほとんどありません。
でも、利己主義ですさんだ人々や、すさんだセリフや、気持ち悪い動物たちや、
そして密猟や密売や解体や、そんなすべてが一体となって何とも魅力的な、
何かのマネではないリンダだけの世界をつくりあげています。
そうして描き出される世界の、なんと生々しいほどに生の輝きに満ちていること!
このゲームのテーマは「愛」だそうです。
このキショクワルイ世界の中に確かに存在する「愛の根源的なカタマリ」みたいなものをぜひ感じてみてください。
そして、クソ生意気で暴力的で口が悪くてスタイル抜群でメシをうまそうに食べるリンダのそばに、
何があっても居てあげてください。そう、例え何があっても…。
リンダキューブ完全版
ストーリーの中には痛いものもありますが(旦那の体に奥さんが埋まってるのとか)、
全体的には面白く遊べました。
RPGとしては短めなので、サッと遊びたい人にはオススメです。
レベルが上がるのが早いので、弱い動物は早めに集めましょう。
ゲームデザイン脳 ―桝田省治の発想とワザ― (ThinkMap)
リンダキューブや俺の屍を越えてゆけ等、発売から10年以上経過した現在でも
PSストアで売り上げを記録する人気ゲームのデザイナー桝田省治氏の他に類を
見ない奇抜なアイデアの発想の源を探ります。
各ゲームの裏話も多数収録されているので、ファンの方はより深くゲームを楽
しめますし、ゲームクリエーターやそれを志す人には、とても大きなヒントに
溢れているので、お勧めしたい一冊です。
美談だけではなく、具体的な失敗例もあります。
それらの事例は、自分も実際にプレイした時に感じた事と多く重なったので、
的確に分析しているんだなぁと感嘆しました。
実用書でありながら、けっして堅苦しくなく、面白おかしく書かれているのも
ポイントです。
−本書に登場する主なタイトル−
俺の屍を越えてゆけ
リンダキューブ
ネクストキング(&ときめきメモリアル
メタルマックス
ドラゴンクエスト
勇者死す
鬼切り夜鳥子
商人よ大志を抱け
暴れん坊プリンセス
我が竜を見よ
天外魔境2
幻の天外魔境3(&ハルカ 天空の邪馬台国