アラビアの夜の種族〈1〉 (角川文庫)
壮大なファンタジーです。
歴史、ミステリーも絡んでますが、
この二つの要素は中途半端です。
語り口調がユーモラスで、語彙を駆使してます。
表現がいちいち大仰で、雄大です。
古川日出男さんの経歴読んだら、劇の台本書かれて
いたということで納得しました。
印象に残ってる言葉が
「その書は惑乱が拾い、錯乱が買い入れ、癲乱
が陳列したのです」
「書物はそれ自身の意思で出会うべき人物の
所へ現れる」
言葉遊び嫌いな人には、しんどいかもしれません。
ファンタジー、童話好きの人にお勧めです。
シニカルな大人の童話です。
モンキービジネス 2011 Spring vol.13 ポール・オースター号
柴田元幸氏の責任編集による季刊の文芸誌。今回は、なんとポール・オースターの大特集。こういった特集はサリンジャーの特集をやって以来かな。大満足のいい特集でした。
ポール・オースターの翻訳を手がけている柴田元幸氏のことだから、いつかはこの雑誌でポール・オースターの特集を組むのだろうなって予想はしていたけれど、やはり、とてもいい特集に仕上がっている。
冒頭は、「私はジャガイモ」と題された昨年の12月にニューヨークで行われた、オースターと柴田氏の対談。ポール・オースターの翻訳経験も踏まえて、翻訳と創作の関わり合いなど若い作家志望者向けのいい対談だった。
その他、盛りだくさんの特集だけれど、最も好きだったのは、オースターの未訳のエッセイを集めた「ポートレイツ」の中の
1編、「シェイ・スタジアムでの夜」。オースターの野球好きは知っていたけど、この文章を読むと、いかに彼が野球を愛しているのかが分かる。テリー・リーチ、よく知っていたなぁ。
また、オースターの未訳5作の書き出しを集めた「オースター近作書き出し集」はずるい。早く翻訳してくれぇって、まだ、『オラクル・ナイト』も読んでいない自分だけど。
特集以外では、小澤征爾と村上春樹の対談も良かった。音楽が聞こえてくるようだった。
アラビアの夜の種族 (文芸シリーズ)
二日で読破した。
とても贅沢な物語だった。
まず独特の当て字が物語にふさわしい雰囲気を生み出す。
欠色と書いてアルビノと読ませたり森羅万象と書いてあらゆるものと読ませたり「くどすぎる」と思う人もいるかもしれませんが、これはこれでいい!と声を大にして主張。
非常に咀嚼し甲斐のある贅美な文体だった。
紙葉から麝香の酩酊が匂い立つような。
あるいは紙葉に薫き染められた極上の麻薬のような。
ぶっちゃけ韻踏みに特化した西尾維新の何十倍もかっこいい文体だと思うんですよこれ、読みながら何度蠱惑するような余韻に陶然としたことか……
特に海の夢森の夢の描写が素晴らしい。どうしたらこんな表現思いつくの?って感じのめくるめくイメージの奔流に翻弄される快感は読書の醍醐味!
すっげー気持ちいい!!
ひとたび物語世界に没入すれば長すぎるなんて全然感じませんのでご安心を。
棚ぼた的幸運の持ち主(といっちゃ失礼だが)でちょっとお馬鹿なサフィアーンと背中に烙印をもつ天才魔術師ファラーの主人公二人が好対照。
アーダムとジンニーアの艶笑会話には思わず突っ込みたくなること必至。
縦横無尽どころか時空すら超越し広がり続ける阿房宮の描写に異世界を堪能。
終盤明かされるアイユーブの過去には目頭が熱くなりました……。
読み応えのある作品をお探しの方はぜひ!
SWITCH 25周年特別編集号 特集:井上雄彦
Switch,25年を記念した一冊. 主に,井上雄彦先生の,最後のマンガ展,仙台最終重版を特集. 最終となる仙台会場を歩いての,井上先生の感想が読めます. そして,最後のマンガ展,上野,熊本,大阪,仙台,それぞれの展示ポスターを収録. 仙台版の展示ポスターは,折りたたみ形式になっており,横長で,海を背景にした,少年の武蔵の迫力が圧巻な作品!! 最後のマンガ展と平行し,仙台で開催された,バガボンドのアシスタント体験が出来る,ワークショップの記録も掲載. 小中学生が描いた,十人十色のバガボンドの完成原稿が,感想文と共に見れます. 更に,仙台会場入口に井上先生が描いた,巨大壁画のメイキング映像を,本誌連動として,完全無料で“Switch App(スイッチアプリ)"にて公開!! 巨大壁画の制作過程を追った“THE MAKING OF 井上雄彦 最後のマンガ展 最終重版"が,iPhoneとiPadで観れます. バガボンドファンは,是非,鑑賞してみて下さい!! 仙台最終重版に行った方も,行けなかった方も,この一冊は必見です!!
ベルカ、吠えないのか? (文春文庫)
最近、お気に入りの作家。『13』、『アラビアの夜の種族』など、卓抜したストーリーテリングを発揮する。この小説も読ませる。第2次世界大戦から連なる現代史を、犬を軸として描く。
しかし、私が好きなのは、そのストーリーではない。マジカルでリリカルで、リズムのある文体。決して長さを感じさせないトールテラーである。
もっと長いものが読みたい。