片想い
ただのミステリーに留まらず、昔の仲間との友情、
恋、社会問題などを盛り込んだ、読み応えのある長編小説です。
主人公は30代のスポーツライター、そして彼の学生時代のアメフト部
の仲間たちがある事件をめぐって苦悩し、やがて秘密がひとつひとつ明らかになり・・・というようなお話なのですが、なんだか失われた青春、
変わってしまったそれぞれの仲間たち、それでも変わらない友情などが
ないまぜになり、とてもせつない気持ちで読みました。
仲間達の一人一人の個性が、アメフトのポジションの役割と重ねて
すごくよく描かれています。主人公を始め、私は仲間みんなに
感情移入しながら読みました。そういう人間ドラマ的な魅力がまずひとつ。
それから、実はこのお話の縦軸になっているのが「ジェンダーの問題」。
いわゆる「性同一性障害」とか「半陰陽(男女両方の特徴を持った体で
生まれてきた人)」とか、一般的にマイノリティの人たちの悩みとか
暮らしが小説とはいえ説得力をもって描かれているのがとても痛々しくも有り、
興味深くもありました。
ミステリーとしての展開も面白く、
かなり厚い本なのですが一気によんでしまいました。
わかりやすい「解離性障害」入門
解離について、通っているカウンセラースクールで軽く触れ、興味を持ち、この本を買いました。読みやすく、あらゆる解離性障害について、申し分ない説明、実際の臨床例が多数、載せてあり、とても良かったです。専門家の方にも、役立つ本だと思います。入門とは思えない優れた本です。
科学でわかる男と女になるしくみ ヒトの性は、性染色体だけでは決まらない (サイエンス・アイ新書)
性の分化は、実に謎に包まれている。
本書はその謎を科学的に解説した真面目なものであり、けっして興味本位のものではない。
性別には男女の二種類しかない。
しかし、その間のいわゆるグレーゾーンというものがある。
それには、胎児期における心の性分化と体の性分化の時期の違い、が関与している。
これが分かると、いわゆる「オネエキャラ」タレントと性同一性障害の違いというものが理解できる。
また、社会的な性別、いわゆるジェンダーのことや、発達の男女差などまでが本書では述べられている。
しかし、本書で著者が最も強調したいことは、おそらく巻頭の身体と精神の性別のズレ、というあたりだろう。
本叢書はイラストが多く用いられており、本書もまた色鮮やかな、そしてかわいいイラストが多数掲載されている。
そのため、人前で読むのは結構恥ずかしい。
満員電車などでは少々開きづらい。
しかしそれに反して、その内容は性分化について真摯に、そして分かりやすく解説されている。
自分の性を理解するために、また異性を理解するために、本書は必読である。
また、さまざまな理由でグレーゾーンにいる人たちを理解するためにも、本書はよい助けとなる。
性に対する違和感がアブノーマルなものと切り捨てられないために、という著者の姿勢が非常によく分かる一冊である。
24人のビリー・ミリガン〈上〉 (ダニエル・キイス文庫)
犯罪を犯してしまった24の人格を持つ男の半生を綴る。
彼本人から聞きだした話や裁判記録などをまとめたノンフィクションである。
驚かされるのは彼の人格たちの性質や人格が切り替わるときなどが普通の人間と大して変わらない、ということだ。少なくとも私と大して変わらなかった。誰でも感情のままに身を任せて自分でも訳が分からずに行動したことがあるのではないか。あなたが多重人格者ならまさにそのとき人格が切り替わっているであろう。
そういった意味で、自分の中に潜んでいるかもしれない様々な性質について改めて考えさせられた。