佐武と市捕物控 (7) (小学館文庫)
巻が進むに連れて、物語も深くなっているようです。
人の心に巣食う「恐れ」を描いているように思えます。
全部で8話納められていますが、最初の「叢雲(むらくも)」は読者の想像力で読ませるような作品です。
子供の頃の消し難い記憶が刻まれている男。女。
似たような経験のある全く見知らぬ者同士が擦れ違った時、事件は起きます。
5話の「菊人形」もぞっとするような物語です。
老人になって、ただ若い娘の元気な姿を傍目に暮らしたいという欲望。何をするわけではなく、若い女性が発散する気が心地よいのです。
その女性が他の男と関係していると知ったとき、老人の気持ちが揺れます。
人は決してすべてを他人に見せることはできません。
そうやって日常を過ごしています。
ほんの少し、心の隅にあるものが顔を覗かせれば・・・。そんな話が続きます。
PLUS MADHOUSE 4 りんたろう (プラスマッドハウス)
本としてはロングインタビューが中心でほぼ全体が文字の構成です。口絵や絵コンテも一部ありますがビジュアル面は極めて少ないので文字を読む事が苦手な方には向かないかと思います。
インタビューとしては、氏の幼い〜子供の頃〜社会人、そしてアニメ業界関係へ携わってからの各作品の話で時系列的に進行。アニメ業界では主に東映動画と虫プロ在籍時代、マッドハウスとの制作作品。
今のアニメ業界ではデジタル化が進んで想像もしにくい部分もあると思いますが当時では、りんたろう氏の演出の発想はかなり大胆なアイディアやイメージがあった事も理解できます。
中でも私が成程と思えた話が美術の椋尾さんとのやりとりです。夏の風景で畦道にある砂利まで細かく描いてあるが、りんたろう氏は砂利はいらないという。理由は太陽の光でほとんど白く飛んで見えるといった感じで具体的なイメージがあった部分(他にもありますがココでは紹介しきれません)。
作品では「グランプリの鷹」物語路線の変更にも今更に納得。TV版「ハーロック」も製作状況は過酷でありながら、好きな要素も盛り込んだ作品であったようです。
劇場版「銀河鉄道999」は1作目でやりきり感があったので2作目は、あまり好んで監督をした作品で無い事も意外な事実…。ちなみに細田守監督は999劇場第2作がりんたろう作品No.1との話もあり、魅力内容を語っていました。
「幻魔大戦」での"大友克洋"起用や後の繋がり、「メトロポリス」等での手塚作品への想いも興味深いです。新作「よなよなペンギン」も、監督として独自の3D表現を目指した事も触れられています。
あと関係者コメント集や作画陣による、りんたろう似顔絵もGood。
私は内容は満足ですが定価が高い気味で、一つ減の☆4つ評価です。アニメ映像製作に興味を持ってる方の幅広い層に読んで感じてもらいたい本と思いますので定価はもう少し抑えて欲しかったですね。
テレビまんが主題歌のあゆみ
個人的な意見として、1960〜1990年代位までのアニメソングには、
最近のアニメソングが無くしてしまった、何かがあるような気がする…
その何かを知って頂く為にも、是非聴いて頂きたいアルバムです。
佐武と市捕物控 (1) (小学館文庫)
1968-73年に「ビッグコミック」「増刊ビッグコミック」に連載・掲載。あらゆる分野のまんがに名作・傑作を残した作者の時代劇。初期は中編、その後短編連作となった。アニメ化もされたようだが、それは無理だろう。当時のアニメ絵で対応できる作品ではない。
石森章太郎は疑いなく日本を代表するまんが家のひとりではあったが、ナンバーワンになったことは遂になかったという気がする。この作品でも、黒を基調とした見事な画力、むらはあるが円熟した構成、実験的手法をあえて試みる勇気など、作者の長所は遺憾なく発揮されている。筋書きなどとは関係なく、ほれぼれするような絵が随所にあり、現代においてもまったく古びていない本作品は、傑作の名に恥じないはずである。それでもなお、本作に限らず私が彼の作品に感じる違和感とは何か。それは、表現の過剰なわかりやすさである。
彼の作品には、「はい、ここで笑いましょう」「ここでは余韻に浸りましょう」などというサインが至るところにみられる。私にはそれが煩わしい。絵で何でも表現できるという自信がそうさせたのだろうか。後年、吹き出しの外に墨筆で感嘆詞を書き添える手法を多用したことで画面が非常にうっとうしくなったのも、文字さえ絵に溶け込ませようとした試みの失敗であったのかもしれない。巧さを誇示したらその価値は半減する、ということに気づいてほしかったと思う。
佐武と市捕物控 (8) (小学館文庫)
このシリーズは巻を重ねるに連れて面白さが増しています。
江戸の町を鳥瞰したような構図。
市やんの居合い。鉛筆書きのような場面もあります。
若造から一端の十手に成長した佐武やん。
怨み、嫉妬、道ならぬ恋。
どれも隠しておきたいことばかりですが、その秘めた思いが事件を生み出します。
浮世絵を物語にしたような抒情感がたっぷりと染み込んだ事件簿です。
石ノ森氏ならではの世界だと思います。
凄い。