Lectures on Quantum Mechanics (Dover Books on Physics)
ゲージ理論や重力場を量子化するときには、余分の自由度を固定しなければならいが、これが系に対して拘束をかすことになる。Diracは、時間を特別に扱うハミルトン力学を議論の中心において、重力場の量子化に取り組んだ。本書は、そのような系の量子化について碩学Diracが明確に取り組んだ講義録である。Diracの「一般相対論」(東京図書)には訳者の江沢によるやさしい紹介が、大貫「解析力学」(岩波書店)では詳しい解説があるので、合わせて読むと良い。
私が学生の時には、本書は絶版になっていて、余所の大学の研究室にまで借りに行った。その本が、Dover版となって安く買えるようになったのは、本当に嬉しい。
Principles of Quantum Mechanics (International Series of Monographs on Physics)
初版出版から70年が経ったこのDiracの量子力学であるが、今でも最もすばらしい量子力学のテキストといえよう。特に表示の簡潔さ、力学系に対する哲学感などはこれを超えるものはないだろう。どの章もすばらしいのであるが、特に11章の相対論的電子論は物理に携わるすべての人に読んでほしい。波動方程式のLorentz共変性やハミルトニアンの1階微分の要請からスピンの存在が導かれる歴史的瞬間を味わえるのは、この上ない学問的至福といえよう。星5個では足りない、物理学の本の中では最もすばらしい本と信じる。
ちなみに副読本としてはJ.J.SakuraiのModern Quantum
Mechanics をお勧めする。同じようにブラケット表示を採用し、Diracに欠けている量子力学の現代的視点が把握できるからである。
Quantum Mechanics
量子力学を学ぶ上で基本となる事柄を詳しく書いた良い本です。
標準的といっていい内容。
和訳されたものも売られていますが
英語に慣れていくという意味で原書で読むのも良いのではないでしょうか
「量子論」を楽しむ本―ミクロの世界から宇宙まで最先端物理学が図解でわかる! (PHP文庫)
佐藤勝彦先生の文庫は、すべて読んでいます。4冊の既刊本の中では、この量子論の話が一番難しく、なかなか読んでいてもすぐには理解できませんでした。ただ、シュレジンガーの猫をナレーターにした設定から入り、歴史上の相対性理論との対立など、詳細がわからなくても、量子論がどういう立場で、発展していったかなど、大きな流れを知ることができ、大変、参考になります。2回、3回と読めば、また理解も深まると思うので、何回も読みたいです。
宇宙は何でできているのか (幻冬舎新書)
新聞広告で絶賛されていたので手に取ってみた。
確かに難しいと敬遠しがちな素粒子論と宇宙論がよくわかる。いや、わかった気になる、というのが本当だろう。後半の議論、対称性の破れだとか、超ひも理論、大統一理論などはやっぱりほとんどわからない。が、それでも本書が「よくわかる」のは、物理学者が何を知りたがっているのか、「謎」が何なのかを素人にもわかるように説明してくれているからだと思う。
宇宙の95%は正体のわからない暗黒物質と暗黒エネルギーで満たされている、原子なんて5%しかない、という。なぜ、物理学者はそんな『妄想』を抱くのか。その理由がわかる。
そしてもうひとつ。原子よりもずっと小さな素粒子の存在も、理論だけでなくて、ひとつひとつ最後はちゃんと実験で確かめていることがわかる。もちろん、規模もレベルも全く違うが、実験で確かめる、という点では小中学校の理科と同じだ。そこがわかるのがとても大きい。
入門書というよりも啓蒙書だろう。ここから先はとんでもなく専門的になりそうで、中高年の科学好きレベルではとても先には進めそうもない。が、中高生の科学好きにはぜひ読んでもらいたいと思う。こういう本こそが20年後の日本を救うのかもしれない。