白髪鬼 新装版 (光文社文庫)
岡本綺堂の怪談十三作を収めた短編集。
いつもながらの何とも言えぬ江戸時代の雰囲気が漂い、と言いたいところですが、本作品集の中で江戸を舞台としたものは、十三作中四作のみ。残りは明治から昭和初期までの時代を扱った短編となっています。が、妖しくどこか懐かしい作者の描く幻想的な世界はそのまま、妖しの世界へと誘ってくれます。
木曾の杣人が山奥で出会った怪異を語る『木曾の杣人』、小舟の上で海亀の大群に襲われる『海亀』、夜詰めの若い侍たちがはじめた百物語の話『百物語』などなど、怪談としてとても優れたものが多いのも本作品集の特徴。
「こういう理由があったからこそ、この怪異が起きた」。この理由の部分がハッキリと語られないことが多く、それだからこそ胸に少しずつ少しずつ怖さが忍び入ってくる岡本綺堂の怪談。光文社文庫版で何冊か出ている作者の怪談集ですが、個人的にはこの『白髪鬼』が一番です。
三浦老人昔話 - 岡本綺堂読物集一 (中公文庫)
仮名遣いを新かなに改めなかったのは大英断。
やはり雰囲気が出ます。
綺堂に限らず、新かなを嫌った谷崎、断じて認めなかった百'閧などは、もとの形のままで出して上げるのが筋なのでは?
二三頁も読めばすぐ慣れるのに、しかもいろいろ不都合な箇所も出て来るのに、なぜわざわざ新かなに改めるのか合点がいきません。