バッハ:平均律クラヴィーア曲集第1巻
あのポリーニがバッハを録音したというだけでも驚きです。
そしてこのCD購入後、知らずのうちにもう何度繰り返し聴いたことか…
デビュー以来、ポリーニの全ての公式音源を耳にしてきましたが、
そんな彼のバッハを聴くのは今回が初めて…
というのが私を含めたほとんどの日本人ではないでしょうか。
以前より海外では演奏されていたというこの平均律第1巻
今回の録音は、ポリーニにとって“満を持しての録音”というのが、
冒頭のプレリュード〜フーガを聴いた瞬間からよくわかります。
それにしても音が美しい。豊かな低音から想像するに、今回もファブリーニを弾いているのでしょうか?
演奏内容は、今までのどの演奏よりも遊びが一切感じられなく、
彼らしい生真面目な平均律に仕上がっており、
襟を正し、約2時間息抜きの出来ない演奏です。
ポリーニと共にこの時代に生きてきて良かった…との幸せな想いにすら包まれます。
チェンバロに比較し、残響が豊かなピアノの特性を十分に生かしきった心地よい
フレーズの数々は生命力に満ち溢れ、ポリーニの確かな洞察力が要所に滲み出ています。
これから何度も何度も聴き込まれるにつれ、
偉大なる録音と認めざるを得ない第1巻となることでしょう。
※今回の録音でも終始呼吸音や唸り声が収録されていますが、私には全く気になりませんでした。
ピアノ協奏曲第3番ハ短調 作品37 [DVD]
高いが、DVD2枚組みでボリュームたっぷりである。ベームの指揮姿はなかなかかっこいい。無骨だ。
ブラームスのピアノ協奏曲第2番はこのDVDではじめて聴いたが、第1番のほうがよほど良いと思う。アバドの指揮や、ポリーニのピアノがわるいのだろうか?
「皇帝」は曲のきらびやかさを損ねず悪くないと思った。
ベートーヴェン:ピアノソナタ「悲愴」「月光」「熱情」
ベートーヴェンのピアノソナタは、ブレンデルの3度目の録音を愛聴してきました。ブレンデルの場合、非常に楽譜に忠実で、正統派のベートーヴェンを聴かせてくれるところがいいのですが、はっとさせられるような音のきらめきというものがないのも事実だと思います。ブレンデル自身、それはわかっているでしょうし、自分の求めるベートーヴェン像がそこにあるのだと思います。ブレンデルの演奏に慣れていてこのポリーニのベートーヴェンを聴くと、これらのソナタにはまだまだこんな解釈の余地があったのかと、ある意味はっとさせられます。特に「月光」は素晴らしいです。しかし「熱情」は いただけません。いたずらにピアノを鳴らしすぎているというか、ここまで滅茶苦茶に弾かれると原曲がわからなくなります。もっとも、ここに収められている「月光」と「熱情」では、録音された時期が違うので、一概に「ポリーニは・・・」とは言えません。この3大ソナタだけを聴こうと思わずに、録音された年代別に、別々にCDを買って、その年代のポリーニをお聴きになることをお勧めします。ベートーヴェンのピアノソナタは、有名曲以外でも素晴らしいものはたくさんありますので、是非そういう聴き方をして「ポリーニ」を体験していただきたいと思います。
ショパン・リサイタル
夜想曲全集(2005年録音)以来のポリーニによるショパンであるが、今回は従来のような「同じカテゴリの作品を集めたアルバム」ではなく、「同時期に作曲された作品を集めたアルバム」となった。この点がまず意外である。これまでポリーニが作品を録音するにあたって、このような企画的意図を持つことはなく、むしろそれと違う次元のアプローチをクールに心がけるタイプだと思ったからだ。私は、かつてアシュケナージがショパンのピアノ独奏作品を録音するとき、今回のポリーニのように「作曲年代」順の録音を行っていたことを思い出す。もちろん、それでも全体を通して一貫したレベルにあり、そのため、それを夜想曲集やポロネーズ集という形で再編集しても、まったく「型ずれ」のようなものはおきなかったのだが、それでもポリーニの場合、メインのソナタ第2番やそれに継ぐ大曲のバラード第2番が「再録音」に当たる分だけ意外さも増した。作品37の夜想曲が収録から漏れているのは、さすがに直近の録音から間が無さ過ぎたためだろう。
というわけで、ここに収録されているのは1837年から1839年にかけて生まれた作品たちである。1837年というとジョルジュ・サンドとの恋愛関係が始まった年でもあり、マジョルカ島への逃避滞在の時期も重なっている。音楽への情熱と憂いが率直に表現された作品たちだと思う。
いずれも再録音となるソナタとバラードは早めのテンポでダイナミックな活力に満ちている。ソナタの第1楽章で再現を提示部から繰り返しているが、音楽に冗長感はみられずビシッとしている。しかも旧録音に加えて表現の幅が増しており、第1楽章の展開部の多層な響きは充実感があって見事。
3曲のワルツはいくぶん乾いたタッチで粒立ち良い音色が心地よい。第3番の悲しみも高雅に昇華されていて、さすがにポリーニのショパンであると唸らされる。第4番の華麗な演奏効果も上々。マズルカもインテンポで感情を抑えた伴奏により、旋律が気高さを纏う印象的な演奏。しかし、個人的に一番その美しさに打たれたのは即興曲第2番である。この曲の持つ様々な感情を決して過度にならず適切に表現し、かつ他の魅力も様々に伝わってくる。私にとって、この曲がこんなに名曲として響いたのは久しぶりだった。
Chopin: Etudes Op.10/Op.25
幼い頃からショパンと言えばルービンシュタインでした。でも、ルービンシュタインのエチュードってあまり無いんです。そこで、今回評価の高いポリーニ盤を購入しました。
評価は文句無しです。完璧と評されるテクニックも凄いですが、技術だけではなく情熱を感じる名演だと思います。興味のある方はぜひ一聴の価値ありですよ。決して損はありません。