大学病院のウラは墓場―医学部が患者を殺す (幻冬舎新書)
タイトルおよび帯に記載されている副題をみて従来からよくある告発文の類いと思って何となく買ってしまったが、読んでみると違った。内容は病院側、患者側どちらにも偏向せず、大学病院のかかえ諸問題を取り上げている。最近の医師不足の原因、内視鏡死亡事件の裏にある問題点など、全てが納得できるのである。そして最後の章の大学病院の改革案に賛成である。ちなみに私は最近まで大学病院の助教授であった。
破裂
かなり興味をそそられた。同じ医局の友人の間でもいろんな意味で評判になってます。社会問題となっているさまざまなテーマ、たとえば高齢者問題、医療費問題、医療過誤の問題、麻酔科医の薬物中毒問題などがもりこみすぎ?とも思えるほど詰まっています。
最終的なストーリー展開はありふれているかもしれないけど、読ませる力がありました。
日本人の死に時―そんなに長生きしたいですか (幻冬舎新書)
現代医療による延命策は、死の苦痛をかえって辛く長引かせる。食事も水分摂取もしたくなければせずに、枯れて死ぬのが苦痛の無い死に方。これを受け容れたい。
医者に期待するべきは、治療を施すべき病気か、放っておくべき病気かの判断である。それが上手く出来ればありがたい。
心のクスリ
心と体両面の健康をテーマにしたインタビュー集。がんという病気とどう付き合っていくのか、最終的には必ず死ぬわれわれが老いと衰えをどう受け入れるべきか……などなどの心を悩ませる問題について、ちょっと俯瞰からの視点を与えてくれ、確かに心が楽になる効果があった。
帯に写真が出ている4人(曽野綾子、内田樹、立花隆、香山リカ)も豪華だが、それ以外の10人もかなり豪華な面子だ。
・三國連太郎(俳優。老いについて)
・山田洋次(映画監督。家族のあり方について)
・大津秀一(終末期医療医。人が死ぬときに後悔することについて)
・村山由佳(作家。恋愛について)
・福島智(東大先端科学技術研究センター教授。盲ろう(目が見えず、耳も聞こえない)と鬱状態になった経験について)
・野田聖子(政治家。不妊治療と高齢出産について)
・石飛幸三(特別養護老人ホーム常勤医。終末期医療について)
・渡辺利夫(拓殖大学学長。健康診断の無意味さについて)
・久坂部羊(作家・医師。健康志向の行き過ぎについて)
・雨宮処凛(作家。小心者としての生き方について)
個人的には、中でも福島智さんの話に強い印象を受けた。目が見えなくなり耳が聞こえなくなってもめげず、教授にまでなった福島さんだが、責任のある立場になったとき、その重圧にうつ状態になってしまう。非凡な人物が、比較的よくある困難に最も苦しんだという話は、自分のような凡人にとってむしろ救われる思いがした。