月の輝く夜に (花とゆめCOMICS)
「なんて素敵にジャパネスク」や「ざ・ちぇんじ」のような元気一杯、平安ラブコメを期待する人には不向きです。
あえていえば「ジャパネスク」の人妻編後半のような愛憎劇です。
ゆったりとして静謐かつ織火のような物語は、ときにもどかしくも平安時代の恋を追体験できるような感覚を覚えます。
ただ、氷室冴子が狙って書いたのかどうかわかりませんが、紫式部風の自己憐憫的な物語展開なので結構好き嫌いはあるかも。
だから単行本未収録作品なのかもしれません。
ですが、山内直美の再現力には脱帽です。
漫画にするにはかなり難しい話だと思うので、本当によく描いたなと思いました。
恋する女たち [DVD]
本作品を気まぐれに何の前提知識も無く見たのであるが、すぐれた青春映画だった。いわゆる何度でも見たくなるタイプの映画だ。一般的には、「お正月アイドル映画」に分類されてしまうのであるが、安っぽさやお手軽さは微塵も感じさせず、見終わった後の清々しさがすばらしい好作品である。VHS版がかなり前に廃盤となって以来、長らく見ることはできなかったが、近年DVDで復刻された。
情緒あふるる北陸の古都、金沢を舞台に、演技的にはまだまだこれからといった印象が拭えないものの、若手新人女優ならではの初々しさ、恋する少女の拙さ、危うさ、脆さ、恥じらい、清々しさを全面に押し出した、たいへん印象深い作品に仕上がっている。
これには大森監督の人柄による、若手俳優に対する育成テクニックと1980年代のヤングアダルト小説のカリスマ的巨匠であった故・氷室冴子さんの自伝的作品を原作にしているところも大きい。(原作よりこちらのほうが面白い)
他人を好きになるということへのあこがれや恐れは言葉では表しにくく、恋には形や決まったスタイルはなく、学校では教えてくれないことばかり。女同士の友情や嫉妬、意地やプライド、ライバル意識や反発など、大人になる通過儀礼を走馬燈のように見せてくれる。
美人だがやや線の細い高井麻巳子(原作の緑子のイメージに近い)、ワイルドで野性味のある相楽ハル子、おっとりマイペース型の斉藤由貴と3人の個性をうまく生かしています。三人とも撮影の合間には高校の同級生のように仲良しだったというのも影響しているのかもしれません。
斉藤由貴さんが、好きな人の振られるところを偶然見てしまって、夜の商店街で涙を無理矢理こらえながら歩くシーン、夜明けの海岸を高井麻巳子さんと二人裸足で歩きながら、恋について語るシーンが印象的。「失恋する前と後で、その人に対する気持ちは一グラムも変わらない!」というセリフは、心に残るものでした。極めつけは、ラスト近くの晴れ着姿での海岸での野点シーン。マジ度肝を抜かれる。なんと断崖絶壁ぎりぎりのところで茶を点てていたのだ!。ここまでやるか!どうやって撮影したのだろう。これにはほんとうにビックリした。現代であればCGとかVFXとかで済ませるのであろうが、実写には空気感がどうやってもかなわない。・・・その美しさは犯罪的でさえある。彼女たち、茶道の心得もないうえに、足場も悪く、着物での撮影はすごく大変だったようだが・・。3人とも根性も度胸もスゴイ。
私の出身地では私服通学の高校が全くなく、最初は短大生だと思っていました。新人アイドル作品故、続編やシリーズものが制作されなかった(できなかった)のが残念です。 姉貴役が原田貴和子さんというのもファンにはうれしいところ。
なお、再発売のDVDには特典映像として、斉藤由貴本人によるオーディオコメンタリーと20年後の金沢ロケ地巡りなどが付属するのも美点です。
一番最初から耳にするサウンドが素直でいいです。
若き頃の夏の思い出が掘り起こされるような
・・・そんな感じでしょうか。
この作品を見終わった後、また必ず耳にしたくなります。
私はジブリ作品は全て見てきたつもりでしたが、
唯一この作品だけは見ていませんでした。
そんな人は他にもいるんじゃないかな?
この作品を知ったときは「ああ、こんなのもあったんだ」
という感じで気にも止めませんでした。
なぜなら、ありきたりの青春ドラマのようで、
みるのが億劫だったからです。
しかし、そんな考えは実際見てからあっさり覆されました。「他のジブリ作品とは見劣りするが・・・」そんなこと絶対にないです!
簡単に言えば、作品の主旨は男と女の淡い恋模様ですが、
その関係は遠すぎず、近すぎず、それに尽くさず、
といった感じで見る者の心をしっかり捉えます。
・・これは見た人だけが分かるでしょう。
遠い夏の思い出に何かを忘れてきたあなた、
最近海を眺めたことが無いあなた
にぴったりの作品です。
あ、それとジブリを極めたい人にもね!!
月の輝く夜に/ざ・ちぇんじ! (コバルト文庫)
表題二作の他に、「少女小説家を殺せ!1」「少女小説家を殺せ!2」
「クララ白書 番外編 お姉さまたちの日々」が収録されています。
「月の輝く夜に」は、人の感情の醜さ、哀しさのなかにきらりと凝った
美しい結晶を垣間みるような、そんな短編だと思っています。
そういったきれいな結晶は、歳をとると段々大切に出来なくなるものですけれど、
それでも、かつて女の子であった限り、決して無くなることはなくて、
読み返す度に私を泣かせ続けることでしょう。
雑誌掲載時に読み、強い印象を受けて忘れられなかった短編です。
けれど、それだけを目当てにするにはこの本は少し高価で、
(「ざ・ちぇんじ!」は別に持っているため)
迷いながらの購入だったのですが、
ずっと読みたかったクララの番外編が載っているのに気付いたときには、
本をもつ手が震えました。
買ってよかったと心から思います。
初出を見たら、1985年Cobalt冬の号!
なんと長く、幻の番外編であったことでしょう。
きらめく虹子女史、清らかなる椿姫の白路さん、奇跡の高城さん。
しーの視点ではまさに雲上人だったお姉さまたちの、
華やかならざる(いや、別の意味では華々しい…?)影のご苦労が描かれています。
白路さんにどこまでも振り回されて奔走する虹子さんと高城さんが可笑しくて、
散々笑いながらも、どこか胸が詰まるような気持ちで読了しました。
懐かしくて、愛おしい。
大好きで仕方なかった彼女たち、
そしてなにより氷室冴子さんの文章にもう一度出会わせてくれたことに、
深く感謝します。
海がきこえる [VHS]
登場人物の雰囲気や話の内容など全てにハマリました。
なんていうか私の育ってきた環境と作品の中の環境はまったく違うはずなのに、なぜか「なつかしい」という感じです。
文庫も出ていますがこちらもとても楽しめました。挿絵が描かれているので、人物の動きが想像しやすいです。早くDVD化してくれることを願っています。