病気がみえる 〈vol.7〉 脳・神経 (Medical Disease:An Illustrated Reference)
日本の漫画文化が医学書に花開いた傑作です。イラストの豊富な医学書はアメリカ発の教科書の特徴でした。しかし、「病気がみえる」シリーズのイラストは単なる図ではありません。手塚治虫を源流とし茨木保先生をへて完成した、わかりやすい点で日本発医学漫画の傑作でしょう。文章による説明は的確です。監修者は、河村満先生(高次脳機能障害)、糸山泰人先生(脱髄疾患)、西澤正豊先生(脊髄小脳変性症)など各分野の第一人者が担当している点も素晴らしい。
本書と同様のコンセプトの「脳神経疾患ビジュアルブック」は、イラストは科学雑誌「ニュートン」を思わせるコンピューターグラフィックス風で、解説はNTT東日本関東病院の諸先生が中心的に執筆されています。「病気がみえる脳神経」は医療系の方なら職種を問わず役立ち、「脳神経疾患ビジュアルブック」は医師が知識を整理するのに向いていると思われます。
本書の特徴のひとつは、「症候と検査」が最後の方にあることです。通常のテキストでは総論として最初に出てくる部分です。この部分はイラスト、文字ともに小さくなり、一気に情報量が増えます。まずは疾患をしっかり学び、総論的事項はあとで読み返して知識を整理するという構成なのでしょう。多くの学習者が最初の脳神経総論ですっかり勉強が嫌になってしまうので、優れた編集です。また、この部分だけで神経疾患を学ぶ際の資料集として使える内容です。星5つの良書と存じます。