首断ち六地蔵 (光文社文庫)
◆「第一首 地獄院長は燃えた」
廃病院にロケハンに来ていた映画スタッフの一人が、
密室状態の部屋で扼殺され、窓から落とされた……。
死体のある「部分」が、トリックだけでなく、見立てを
構成する上でも、極めて重要なパーツとなっています。
◆「第二首 餓鬼の使いは帰らない」
〈餓鬼道〉の地蔵の首が、「だんまり軒」という、うどん屋の前で発見
される。その店の厨房の大鍋では、着物姿の老婆が茹でられていた……。
“存在しない赤子の孫の謎”について、さまざまな仮説が示されますが、
真相は、なかなかの衝撃度。犯人の特定なんか、どうでもよくなります。
◆「第三首 畜生は桜樹に散る」
花見の場所取りをしていた鰻屋のオーナーが刺殺された。
死体の胃の中には、なぜか、まるまる一匹のウナギ一が。
現場となった桜の周囲には、被害者の足跡しか残されておらず……。
《雪密室》ならぬ《桜密室》というわけですが、
結末で明かされるのは、《意外な凶器》ですw
◆「第四首 修羅の首が笑った」
生首に結び付けられていたロープ、居間に置かれていた姿見、
といったものから導き出される仮説が、それぞれ面白いです。
◆「第五首 人の死に行く道は」
教会の礼拝堂の屋根にあった十字架に被害者が
磔にされ、鉄条網に逆さに、ぶら下げられていた。
神父が、十字架に異状がないことを確認した、わずか
十分後に、前述の奇怪な情景が現出したというのだが……。
「困難は分割せよ」という原理の実践。十字架の処理がポイント。
◆「第六首 天は風を見すてたか」
これまでに起きた六地蔵事件が舞台化されたのだが、開幕を翌日に控えた日
に、風峰役の俳優が、舞台に設営された密室状態の「箱」の中で殺害された。
死因は頭部強打によるもので、凶器は〈天上〉の地蔵の首だった……。
演者の立ち位置を示す「ばみり」のテープ
をもとに、さまざまな仮説が展開されます。
冒頭にぬけぬけと張られた、トリックの伏線に注目。
◆「第無々首 奈落の底の底」
連作長編という形式ならではのどんでん返し。
各話で展開されたバカミス的解決に、まったく別の意味が
付与されることで、くすぶっていた違和感が解消されます。
ロング・ドッグ・バイ (PHP文芸文庫)
犬が出てくる面白いミステリー。
それはタイトルを見れば
一目瞭然ですけどね(笑)
特に殺人は起きません。
犬の世界だからそれは致し方ないです。
ただし謎のごぼう事件から
事件は発展しますけどね。
犯人とかはあまり気にしない。
だって犬の世界ですよ?
あまり大きなことを求めるのは
ふさわしくはないですから。
しかしハードボイルドじゃなくて
パードボイルドなのね。
微妙な違いにご注意。