赤蛙 (新潮文庫)
病床にあった作者が濁流の中でもがく赤蛙を見つめた表題作は、今はどうかしらないが、かつては国語の教科書にものっていたので読んだ人も多いだろう。感傷を極力抑えた鋭い観察力が光る日本文学の佳作の一つだ。島木には同時期に書かれた姉妹品といえる「ジガ蜂」があるので是非読んでみてほしい。孤独で観察眼の鋭敏化した病人が小動物に覚える愛情が新鮮に心に響く。「赤蛙」を含めて現在島木作品は(高価な全集は別として)入手困難。
生活の探求〈第1,2部〉 (1950年) (新潮文庫〈第118,119〉)
※「第二部」カバーの紹介文の転載です。
農村人の自覚をもって歩む杉野駿介の良き理解者であった父。その突然の死後、彼は東京へ向かった。二週間の在京は自らを客観視する機縁となり、実行によって新しい道を切り拓こうという信念をいよいよ固くしていた。悪疫に打克ち、託児所を開設する……。時代の圧力の下にあって、"転向"を政治の問題から人間の問題へと掘り下げた島木健作の力作長編である。
※解説頁・中村光夫