もっけ(勿怪) 1 アフタヌーンKC
民俗学者である柳田國男(やなぎたくにお)は、妖怪の名前を全国から集めた『妖怪名彙』という文章の冒頭に、研究の理由を、「怖畏と信仰の関係」というように明記している。もし、妖怪がこの世界に実在し、それが見えも感じられもしたとしたら。人間は、どのように自分の人生を、生きていくことができるのだろうか。霊能力のある二人の姉妹が悩み苦しみつつ、その状況を受け入れていく過程が、瑞々しく語られている。このマンガは、日本人の信仰心が、自然が失われていく現代という時代に、如何に生き残ることが可能かという思考実験である。
もっけ 其ノ壱 [DVD]
妖怪が見える少女・瑞生(みずき…もしかして「ゲゲゲの鬼太郎」の作者・水木しげるからの命名か?)とその周りの人々を描いた作品である。
第一話は「見越し」という妖怪だった。これは以前、その水木しげる氏の本で「見上げ入道」という妖怪について読んだ事があるが、この妖怪はまさしくそれであろう。見上げ入道の場合も「見上げ入道見越した!」と言えば消えてしまうのだが、その点もそのままだ。
さて作画についてだが、時代設定がそうなっているからかもしれないが、「平成」というよりも「昭和」を感じさせるものとなっており、どこか懐かしさを感じさせる。「となりのトトロ」などのスタジオジブリ作品にも通じるものがある。
また、毎回登場する妖怪も違うので、毎回見ていても飽きさせない。しかしこれを見ていると広島県の三次市に伝わる「稲生物怪録絵巻(いのうもののけろくえまき)」を彷彿とさせる。この瑞生という少女はまさにこの絵巻の主人公・平太郎だ。でも、妖怪が出なくなる平和な日はいつのなるのだろうか?という不安も感じさせる。
しかし、IT等の科学技術が発達した現代、妖怪というものは現代人の心の中には存在しなくなった。自然というものへの畏怖する心が薄れたからである。…だが、それは妖怪を求めようとする現代人の心の中に「都市伝説」としてカタチを変えて息づいていると言えよう。
もっけ 9 (アフタヌーンKC)
本当は「妖怪」と表記するのは間違いなんだろうけど
ほかの作品と対比する上であえてこの表現とします。
帯にも書いてあるように
「奴らは居んのが当たり前ぇ」
というスタンスで
妖怪を退治するのではなく、
それとの付き合いをして行くという形で
そこから人の心や
時代の変化などを表現していたのが
いままでの妖怪物と違うところであり、
非常に好感が持てたところであった。
個人的には高校編はいらなかったのでは?
と思うところもあるのであるが、
無駄に長く続くことなく
非常によくまとまった形で完結したのは
よかったと思います。
しかし、やはりこの物語の本当の主人公は
姉妹ではなく、お爺さんだったのですよ。
スピンオフで短編でいいから
お爺さん主役の話を見てみたいです。
もっけ(8) (アフタヌーンKC (521))
今巻は「カゲトリ」「モノミゴイ」「カクレザトウ」「ノブスマ」「アクガレ」の五話が収録されています。瑞生サイドと静流サイドが交互に続く感じです。瑞生サイドでは瑞生の成長が垣間見られます。(け‥決していやらしい意味でなく)弟分も登場‥!?静流サイドは七巻に引き続きシリアスな感じで進んでいきます。百瀬さんとの関係や静流の様々な思いや悩み。そして帰ってきた危険な妖怪‥また、御崎さんが何やら動き出しそうな気配‥う〜ん気になる!早く続きが読みたくなる巻でした。個人的に「アクガレ」は読んでいてホッと出来ましたね。見たい画がまた見れたといいますか‥。瑞生と静流がこの後、困難をどのように乗り越え、どのように人として成長していくのか‥「もっけ」の世界からこれからも目が離せそうにない。