黒田三十六計 8 (SPコミックス)
侍の時代劇漫画の巨匠平田弘史先生の最新巻。「黒田・三十六計」のタイトル通り、主人公黒田官兵衛中心の話でありますが、敗北した毛利家、明智家のエピソードなど大量に投げ込まれ群像劇となっています。「智に生きるもの」、「義に生きるもの」、「欲に生きるもの」。すべての登場人物が徹底した生き方を貫いていて、その各々生き方が戦場という場所で交わり、男くささの美学を醸し出しています。一番すごいのは、P154の明智光秀を抱く斉藤利三の絵で、この絵だけでも本の価格以上のものがありました。
血だるま剣法・おのれらに告ぐ
差別問題をテーマに扱った結果回収に追い込まれ、42年ぶりに復刊を遂げた時代劇画家平田弘史の最高傑作のひとつ。1968年に「おのれらに告ぐ」のタイトルでリメイクされているが、オリジナルはこちら。自分が生きているうちに読むことができるとは思っていなかったので今回の復刊は心底嬉しい。呉智英の解説も当時の時代背景を詳細に語っており理解の助となろう。
本編を改めて読んでみると、リメイクされた「血だるま剣法」よりも描写が生々しく、筆致が力強く、テーマも重い。幻之助の剣に対する異常な執念から絶望、そして異様な変貌に至るまで、差別問題に正面から向き合った(またそれが故誤解を招く表現もある)平田先生の真摯な視点に胸打たれる。劇画史に残る傑作である。残酷表現にのみとらわれず全編渾身にて読むべし。読まずして死すべからず。
薩摩義士伝 (1) (SPコミックス―時代劇シリーズ)
まず物語の最初の方では迫力のある合戦シーンや薩摩藩士同士のにらみ合いが続いて
見るものを引き付ける圧倒的な描画が多いのですが、この物語は幕府によって
島津薩摩を抑えるためににらみを利かせる意味での、莫大な費用を賭けた無理難題の
治水工事をさせる方へと物語はすすんでゆきます。この話は4巻目の特別読み切りにも
書いているのですが、知恵を働かせて立身出世する話でもなければ、達人を目指す
武芸者の道をもとめる話でもなく、虐げられて反抗する反逆者のドラマでもなく、
話の核は過酷な労働によって死んでいった無念の義士の話です。
薩摩義士の無念の話を1枚1枚じっくり読ませていただきました。
大地獄城,血だるま力士
1961年に発表された「復讐 つんではくずし」のリメイク作として69年に発表された「大地獄城」、75年発表の「血だるま力士」、76年発表の「頭突き無双」の3作が収録された作品集。
著者の初期の代表作のひとつと呼ばれるとともに、その残酷な描写が問題となったということは知っていたが未見だったので、読むことできて本当に嬉しい。以前は全くといっていい程見かけることなかった著者の作品が復刊される近年の状況は本当にありがたい。
「大地獄城」は本当に凄い作品だ。少年誌に連載されていたのが信じられない。今の少年誌では絶対に許されないだろうと思える程リアルな描写、救いようのない残酷な(悲しい)ストーリー。編集部による作品解説(これが非常に丁寧でいい)によるとオリジナルの「つんではくずし」の描写はもっと凄いそうだ。
「つんではくずし」は印象に残る素晴らしいタイトルだ。何故69年のリメイク時には「大地獄城」になってしまったのだろうか。少年誌らしくわかりやすいものにするという編集部の意向が働いたのであろうか。解説では触れていないが個人的には非常に気になる。
平田弘史は「絵」だけで勝負することのできる日本が誇る漫画家である。それなのに一般的な知名度は低い。ファンとしては非常に残念だ。
無明逆流れ レジェンドコミックシリーズ12 (レジェンドコミックシリーズ―ポケットレジェンドワイド (12))
「シグルイ」から原作の「駿河城御前試合」へ、そして此処へ辿り着きました。
「シグルイ」は漫画ですが、この作品は”劇画”です。
作者の初期の作画は、丁寧な線の描き込みで勢いが無いと感じる方も居られるかもしれませんが、私的には満足しております。
同録の「美童記」と、それぞれ星5つと言いたいのですが、
如何せん価格が高いので、合わせて星9つです。