宇宙進化の謎 (ブルーバックス)
ダークマターは、圧倒的大多数の科学者がその存在を認めていても、何で
あるかは分からないという問題があります。
そのため、私は「何であるか分からないけどとにかくある。」との曖昧さ
から、本当はそんなものは存在せず、観測データの不足か、他の新たな
理論によって解消されるべきものではないかと疑っていました。
同じ著者が05年に書いた暗黒宇宙の謎 (ブルーバックス)
を読んでも、この疑念は晴れませんでした。
銀河の回転速度の問題は、他の理論でも説明できそうな感じもしました。
しかし、本書を読んでその疑念は晴れました。
銀河による重力レンズはダークマターを考慮しないと説明できないこと、
宇宙マイクロ波背景放射の均一さからはダークマターを考慮しないと
銀河の形成を説明できないこと、冷たい暗黒物質(CDM)論による
ダークマターの分布の検証などから、納得できました。
なぜこれらを前著に書かなかったのかと思いましたが、観測技術が近年
飛躍的に進歩し、その結果が最近相次いで出されてきたという事情では
仕方がないということでしょうか。
とにかくダークマターがあることは納得できました。
が、いまだにダークマターの正体は良く分からないのですね。
宇宙は本当にひとつなのか (ブルーバックス)
最新の宇宙理論を、手に取るようにわかりやすく解説してくれる本。
太陽系の惑星の好転速度をケプラーの法則から説明し、そこから星々の集まりである銀河の回転に展開して、ケプラーの法則では説明できない事実から暗黒物質の発見に至る解説は、とてもわかりやすい。
加えて、遠くの星の光のスペクトルからその星に含まれる物質を割り出す方法やドップラー効果を使って銀河の回転速度がわかるという説明など新たに教えられた。
また、著者の機構長を務めるIPMUにおいて、宇宙のゲノム計画ともいえる数百万の銀河を観測する計画(すみれ計画)が進められているという。
さらには、暗黒物質の存在の予想とその発見に向けての科学者たちの様々な探索。
加速する膨張宇宙の発見から予測される暗黒エネルギーの存在。
統一理論として期待される超ひも理論。
電磁波力と重力。
そして多次元宇宙と多元宇宙の存在予想。
などなど
コンパクトな新書ながら、難解な理論までもわかりやすく説明してくれる。
そして、われわれにはまだまだわからないことが数多くあり、そのために科学者がいるのだとも改めて思う。
これからの著者の活躍を期待したい。
宇宙論の超トリック 暗黒物質の正体 『現代物理の死角』復刻補強版 (超☆わくわく)
アインシュタインからホーキングの流れで組み立てられてきたビッグバン理論。
この理論を否定する考えを示すことは、日本を始めいわゆる科学者の大御所の人生を否定することになるので、この理論を否定する事実があったとしても、否定することが出来ない状況があるようです。
先の大戦で日本が負けていても負けているといえないようなことと同じでしょうか。
温暖化でなくても温暖化でないといえない雰囲気。
科学の世界は自由に理論を発表できるものだと思っていたが、まったく閉鎖的で、ある教義を信奉しなければ、相手にされない世界なのだなあと思いました。
4%の宇宙 宇宙の96%を支配する“見えない物質”と“見えないエネルギー”の正体に迫る
「宇宙は加速膨張している」という発見の物語である.著者はサイエンスライターで,その発見に関係した研究者のおりなす人間ドラマをドキュメントにまとめあげた.膨張宇宙の発見,宇宙背景放射の観測によるビッグバン宇宙論の確立,そして暗黒物質の存在の確認を経て,物語は暗黒エネルギーの存在の発見へと進む.Ia型超新星が標準光源として使えることが分かり,多くの遠方のIa型超新星を観測することにより,宇宙が物質の重力に逆らって加速膨張していることが確かめられた.この結果,宇宙のエネルギーの70%は物質のエネルギーではなく,斥力をもたらす暗黒エネルギーであることが分かったのである.今のところ,暗黒エネルギーは宇宙定数Λと同定して差し支えないようだ.
物語の登場人物は次から次へと変わっていくので,どの人物がどうだったのかはかなりややこしい.また団体名や施設名やプロジェクト名などは略号で呼ばれることが多いので,覚えにくい.分からなくなれば,ときどき索引を繰ってみるのがいいだろう.和訳と註は,訳者がこの方面の専門家だけあって非常にきちんとしている.
宇宙は何でできているのか (幻冬舎新書)
本書は広大な宇宙の謎を解き明かすにはミクロの世界の素粒子物理学から考察するのが近道だ、と始まる。そして宇宙が何からできているのかという話になるが、結論から言えば「判らない」のである。ただしそこに至る話は素人にもわかるように工夫されており、この辺は知的に興味深い。しかし話は徐々に素粒子物理学の最先端(ディープ)な世界へと進んでいく。恐らくこういった話はどんなにわかり易く書かれていても一般読者には難しいのだろう。ニュートリノやクォークの話は感覚的に理解できない世界だからなのかもしれない。まだ数式が出てこないだけマシではあるが、「Newton」のような図解などビュジュアル的に訴えるものがあればもう少し理解し易かったように思う。しかし謎だらけの宇宙や素粒子の世界に悪戦苦闘しながら切り込んできた人類の英知というか執念には驚かされるばかりである。