倍音 音・ことば・身体の文化誌
昔、シャンティクリアが歌うサラ・ホプキンズの「パースト・ライフ・メロディーズ」を聴いて、倍音がメンバーの上部で作られ、聞き惚れた不思議な体験をして以来、「倍音」にはずっと関心を寄せていました。なかなか「倍音」について書かれた音楽書が無い中で、そのものずばりの名前の本書を見付けたち時は嬉しく感じました。理論的に説明し、図解入りでその波長を類型化しており、視覚に訴える工夫がなされていました。読み終えて「倍音」を感覚的に捉えられたかと問われると返事ができないです。当方の理解力がないと言われればそれまでなのですが。
筆者は尺八の演奏家ですので、その音質と倍音の関係を調べることで本書が生み出されたようです。第5章の日本文化の構造、第6章の超倍音楽器尺八では、音楽の本質を科学的な分析を通して解明しようとするアプローチがなされていました。観念的な話題が挿入されるので筆者の主張をうまく捉える事が出来ない箇所も散見しました。
たとえば、整数次倍音がギラギラした音で、非整数次倍音が濁った音だという24ページの説明はもう一つ分かりにくい例えでした。整数次倍音の強い歌手は美空ひばり、都はるみ、郷ひろみ、松任谷由実、平山ミキなどで、非整数次倍音の強い歌手はハスキー・ヴォイスの森進一、宇多田ヒカル、堺正章などだそうです。その例えられた歌手の声質の違いとも言える特徴は確かに分かりやすかったですが、その響きの違いと倍音の関係をもう少し展開していただくと理解が深まったのではと思いました。
筆者の中村明一氏は、作曲家で、尺八演奏家です。「横山勝也師、多数の虚無僧尺八家に師事。米国バークリー音楽大学にて作曲とジャズ理論を学び、最優等賞で卒業。米国ニューイングランド音楽院大学院修士課程作曲家およびサード・ストリーム科で奨学生として学ぶ。」という経歴の方でした。「ノヴェンバ―・ステップス」の名演奏が耳に残る横山勝也師のお弟子さんというだけで感心しました。
本書の内容です。第1章 不思議な現象 第2章 倍音とは何か 第3章 メディアを席巻する倍音 第4章 日本という環境・身体・言語 第5章 日本文化の構造 第6章 超倍音楽器、尺八 第7章 人間にとって音、音楽とは何か 終章 未来の響きに耳を澄ます
風鈴 (NHK美の壺)
実は間違えて購入しました。
欲しかったのは風鈴そのもの。表紙の写真の風鈴が買えるつもりでクリック。翌日届いてみたら本でした。
ちゃんと見ないで買った慌て者でありますが、こういう偶然の出会いで見つけた本が良書だと嬉しくなります。
開くページ開くページデザインが素晴らしい。フォントの選択や文字の大きさの指定、写真のチョイスや文字とのバランス。ライターも無駄に行数が空いちゃうようなテキトーな仕事をせず、キチンとディレクションに沿った行数ぴったりに合わせて言うべきことをキチンと書いてます。
全てが本物のプロの仕事です。こんなカッコ良い本は久しぶりに見ました。と言うより昔はこういう本がちゃんとあったのになぁ。アートディレクションにちゃんとお金がかけてある本ってやっぱり良いと再確認しました。
もちろん読んでもすっきりしているのに味がある。美味しい緑茶のような本です。
風鈴だけでなくこの『美の壺』をシリーズで色々買いたくなりました。
もちろん最大限のお勧めをさせていただきます。良いモノが見られますよ。
〈COLEZO!〉自然音 水琴窟
蒸し暑さ真っ只中の梅雨の時期に、純粋に水琴窟の音のみを収録した
このCDを購入しました。
水の滴る音を聞いていると、まるで鍾乳洞の中にでもいるような気分になります。
目を閉じ、ひんやりとした鍾乳洞を思い描くと、さわやかな清涼感に包み込まれる・・・。
風鈴より涼しさを感じる音。
水琴窟の音鳴るところには、贅沢な涼みの空間が創りだされます。
ブックレットの解説文がまた素晴らしいです。
日本の文化や、”粋”について興味が湧いてきたので、
「いき」の構造 他二篇 (岩波文庫) を読んでみようかな、と思いました。