ペルセポリス [DVD]
イラン出身の女性監督が自身の経験に基づいて作った作品のようです。
コミカルなキャラクターたちにより、印象はかなり和らげられていますが、かなりヘビーな内容です。
生まれる国が違うだけで、人生は全く異なるものになるのを実感します。
ペルセポリス オリジナル・サウンドトラック
フランス製作のイラン映画『ペルセポリス』のサントラ。
オリエンタル風味を排除して、普通に情感豊かな劇伴になっているので
「イランぽさ」を期待していると面白みに欠けるかもしれませんが、
普遍的な音楽を目指した──これは監督の要望なんだそうです。
本編では意図的に「音痴」=「パワフル」に唄われていた『アイ・オブ・ザ・タイガー』(20曲目)ですが、
このサントラで聴くと、普通にフレンチポップで、すごく耳に馴染みます。
しっとりしていて、いい感じです。
オススメです!!!
Persepolis : The Story of a Childhood and The Story of a Return
イラン出身、フランス在住の絵本作家の自伝である。
ハードカバー版だと2冊になるのだが、このペーパーバックは1冊で完結する。
なので装丁は「それなり」ということを覚悟して購入した。
日本語版だと、マンガのようにあっさり読んでしまうのであえて英語版を選んだ。
これが功を奏し、日本語版の表現よりも濃く感じるので、じっくりと内容を把握しながら読んだ。
(日本語版はAmazonの「なかみ検索」で見た印象だけでの印象。ただ英語版だと字が細かいので目の疲れには注意。)
セクションが子供時代の話で10話、西側諸国に留学ののち故郷に帰った時の話で9話、合計19話の構成になっている。
このアニメーション映画を以前見たことがあり内容は把握しているのだが、グラフィックノベル版はアニメ版にはないエピソードもあるので、アニメ版とは別物のような新鮮な気持ちで楽しめた。
イランは長い歴史から見ても、専制政治と服従の繰り返しなのに豊かで独自の文化を守ってきた。
この本では白色革命からイラン革命、イランイラク戦争と激動の時代の中で、筆者率いる登場人物の不安と葛藤を描いている。
この作品の他のレビューにも述べられるのが、筆者はカージャール朝国王の血をひき、上流階級の家庭で育ったことである。
普通の人間とは違い、金もあり環境が整った人のエピソードだ、と考える向きもあるだろう。
しかし今現在筆者は数か国語を話せていて、絵本作家とアニメーション監督の肩書を持つのは、この本に書かれている以降の人生も努力を惜しまない人だと推察される。
恵まれていながらも筆者は更に努力して知識を吸収し、自由に自己表現ができる世界で立派に生きてほしい、という気高い家族のバックアップもあるのだと思う。
西側諸国に移住すればイランで過ごしてきた生活が一転する、と筆者の父親はここで述べているので、恵まれているとはいえ娘一人をオーストリア留学に出したのも重大事で、両親は抑圧的な国に残り娘に希望を託したのだろう。
不安や葛藤と戦う姿は社会情勢が違えども、社会との違和感を感じる面はなんら私たち日本人と変わりはない。
だが、抑圧された社会の中で生きるイラン人の強さやユーモアを忘れないところも教訓にしたい。
また「一部の過激論者の行動でイランをひとくくりにして判断されてはいけない」と筆者は冒頭のイントロダクションで語っている。
そんな筆者の想いが詰まっている1冊である。
ペルセポリスI イランの少女マルジ
概ね他の皆さんの感想と同じで、非常に面白く、感動させられ、驚かされもする名作と思う。一見様式的で素朴な絵柄だが、その表現力もただ事でない。ほとんど完璧なコミックではないか。
ただ一点、イラン・イラク戦争当時の、サダム・フセイン率いるイラクを、イスラム革命を打倒するためアメリカがバックアップしていたことが明記されていないので星一つ減点。その軍事援助がその後のサダム・フセインの増長に繋がったはずだ。まずアメリカで出版されたことに理由があるのだろう。非常に重要なことだけに、アメリカとイランの対立を考える上で、現イラン政府の悪ばかりが印象付けられかねないのが残念だ。