井上直幸ピアノ奏法〈第2巻〉さまざまなテクニック―タッチとペダリング (DVDブック)
一巻と同じく名DVDだと思います。
一巻が作曲家に対するアプローチの仕方だったのに対して、こちらはそのアプローチをする為の音色の作り方の学習。
タッチについては、専門教育を受けた私も目からうろこのことが多くありました。ごく当たり前にやっていたことを改めてこうして説明していただけると、自分の演奏を客観的に振り返りとても勉強になるし、指導する際にも役立ちます。ペダリングも同様です。
一巻は作曲家に対するアプローチで、抽象的なところもありわかりにくかった人も、二巻を見ると少し霧が晴れると思います。
頭ではわかっているけれど、出来そうで出来ないことがたくさんつまっています。演奏に行き詰ったとき、表現方法に迷いが生じたときに見るようにしています。何度見ても新しい発見があります。
中学生くらいになって、古典、ロマン派、近現代と様々な作品を弾くようになったら是非見てください。ピアノを弾くということがどういうことなのかすぐには理解出来ないかもしれませんが、10個のテクニックのうち1つでも理解出来れば、それが積み重なっていつかすばらしい演奏が出来るでしょう。
ピアノの練習というと、ひたすらピアノの前でエチュードをさらう指の体操になりがちですが、まずは自分の頭の中に音のイメージを持つことがどれほど大切なことか、原点に戻れます。
一生の宝物になりますよ。
ピアノ奏法―音楽を表現する喜び
小さな子供にピアノを真面目に習わせているお母さんに、必ず読んで欲しい1冊です。音楽大学のピアノ科の学生だけが読む本ではなくて、子供レベルが弾くピアノにも大切なことが、いっぱい書いてあります。単なるテクニックだけを書いている、そこいらのマニュアル本では、ありません。でも、ピアノについて正面から向き合って書かれています。そういう先生でしたから。井上先生が早くに逝かれたことが惜しまれます。
いと高き世界へ ハイドン、モーツァルト&シューベルト 井上直幸愛奏曲集
1992年モーツアルトイヤーに福岡銀行地下ホールで彼のオールモーツアルトプログラムを聞きました。イ短調ソナタこそもっとデーモンが欲しいと思いましたが、あとは絶品でした。何よりも芯があるのに柔らかなタッチ。音楽が好きで好きでたまらないその姿勢と演奏スタイル。音楽を演奏する喜びに溢れていました。グルック変奏曲も良かったし晩年のソナタさえぞくぞくするような出来。アンコールの「グラスハーモニカのための音楽」はまるで天国から聞こえてきたみたい。その喜びがいっぱい詰まったCDです。一人でも多くの人に。
井上直幸ピアノ奏法〈第1巻〉作曲家の世界―バッハからドビュッシーまで (DVDブック)
井上氏の著書「ピアノ奏法」と合わせて見ると、氏の伝えたかったことが、より明確に判ると思います。
作曲家一人一人に愛情が溢れ、語りたい伝えたいことがいっぱいで少しまとまりにかける話になっています。しかし、自分の得た技術や奏法をこれほど惜しみなく披露してくれる現役ピアニストはそういないのではないでしょうか。DVDだけ見ていると抽象的で、小さい子供には何を言いたいのか判らないかもしれませんが、何度も繰り返し見ていると理解出来るでしょう。もっとたくさんの作曲家、一人の作曲家のもっとたくさんの作品について触れて欲しかった。井上氏自身もページ数、DVDの時間が伝えたいことを全て伝えるには足りないのだということが感じられます。
私は一介の指導者でしかありませんから、氏の表現に対する理解は出来ても、そこまでの技術が無く思うようには弾けません。理解することと出来ることの間には大きな溝があります。
しかし、ピアノ学習者で少し年齢が上の人はもちろん、大人の愛好家、指導者、そして何より若いピアニストに見て欲しい。音楽の伝統的なスタイルと、自分なりの解釈の個性のバランスをもっと勉強して欲しいから。最近の若い演奏家は個性を重視するあまり何でもありの演奏家が増えてきています。いつまで経っても色あせない作曲家へのアプローチをこのDVDで勉強して欲しいです。
才能のある若いピアニストの卵が繰り返し見ていれば、きっとすばらしい演奏家になれることでしょう。
モーツァルト:4手のためのピアノ音楽
優しい響きが穏やかな気分にさせ、軽やかな音色がリラクゼーションには持って来いの1枚。
ピアノ独奏やピアノ協奏曲とはまた違った、2人の、4本の手によるピアノ曲。
あまり聴き慣れていない人が多いかと思います。
見事に息の合った2人でないと作り出せない軽快な音の世界を是非!