構造主義 (文庫クセジュ 468)
認知心理学の源ともなったスイスの心理学者ピアジェによる構造主義の分かりやすい解説書。
日本で巷にある構造主義の解説書のほとんどはソシュール経由のフランス構造主義ばかり。構造主義の解説書というと、橋爪大三郎の「はじめての構造主義」という名著がある。あれはレヴィ・ストロースからの入門だが、数学的構造主義にも言及している親切な本。しかし、数学的構造主義を本格的に用いた理論といえば、ピアジェの発生的認識論がある。その構造主義者の一人であるピアジェが書いたのがこの本なのです。
どうも日本では構造主義というと、フランス現代思想ばかりが紹介されがちだが、心理学を専攻していた身からすると、ピアジェやチョムスキーがなぜ無視されるのか、不満でたまらなかった。そういうわけで、この著作はその空白を埋めてくれる見事な入門書になっているのです。とくに、最後のフーコー批判はものすごいものがある。「言葉と物」は理由もなく変化する恣意的な構造に過ぎないという批判はさすが。構造主義とは、実は科学的方法論だったのだと気づかせてくれる稀有の傑作。
ただし誤解してはならないのは、フランス構造主義が全くダメという事ではないということ。実際、ピアジェはアルチュセールの事は褒めている。本当に必要なのは、その方法や理論が現実を理解するうえでいかに役立つかを、きっちりと捉えなくてはならないことなのです。安易に特定の理論を受け入れたり捨て去ったりすることがどんなに不毛なことか。そういう本来の意味での科学的な態度を教えてくれるのもこの本なのです。
あやかし恋綺譚 あなたをサイヨウ!の巻 (ビーズログ文庫)
他の作品を知らないので比べることは出来ないのですが、主人公の妄想力が激しすぎて私は最初置いてけぼりになった気がします…。時々出てくる妄想の中の人物に関してネタが降りてきた。と…奇行に走るあたりも共感はできず…主人公側の気持ちには時々もやっとしてしまった感はあります。
相手側の男性はゆるふわだけど実は…という感じだと書いてたので、もっと緩い感じだとかふわっとした感じをして相手を翻弄して実は…みたいな展開を想像していたのですが何となく自分的には消化不良。
個人的にはほどほどの楽しんだけど、消化不良感もそれなりにあった感じです。
今現在ハマっているラノベが自分の中で結構な大当たりだったせいか、もっと色々やってもいいんじゃないかと思ってしまいましたが、自分の好みというのもあるので…星は3つに。
夜中に書いているため文章がおかしければ後日書き直します。
ブッダの真理のことば・感興のことば (岩波文庫)
「怨みに報いるに怨みを以てしたならば、ついに怨みの息むことがない。」
「他人のしたこととしなかったことを見るな。ただ自分のしたこととしなかったことだけを見よ。」
「スッタニパータ」と「ダンマパダ」は原始仏典の中でも特に古いものとされ、釈尊の肉声を比較的正確に伝えていると言われる。
そこに現れる釈尊の姿は大乗仏典に見られるような神秘的な「スーパーマン」ではなく、ぽつり、ぽつりと真理を紡ぎ出す老人の姿である。
私が特に愛読するのは「ダンマパダ」である。非常に内省的なのである。
一時はバッグの中に入れて持ち歩いていたこともあった。いまでも折に触れて読み返し、そのたびにハッと過ちに反省させられることが多い。いわば叱ってくれる貴重な本である。
中村元先生の翻訳も非常にこなれていて読みやすい。注釈にも非常に力が入っているので、ぜひ本文と対照させて読んでいただきたい。釈尊の真意が浮かび上がってくる。