桑潟幸一准教授のスタイリッシュな生活
ミステリーとしての謎解きの部分が弱いのは、目をつむります。
月収10万余りで下流大学助教授が巻き込まれる「事件」を、彼の自虐ネタを中心に笑わせてくれます。これ以上自虐が過ぎるとイタクなるところを筆者は巧みにかわしながら描き出しています。
また、彼が顧問を務める「文芸部」のメンバーのキャラも立っています。
気楽に読めます。気分転換にお勧め。
黄色い水着の謎 桑潟幸一准教授のスタイリッシュな生活2
桑潟幸一は日本文化論の準教授。
今年、千葉にある最低偏差値大学のたらちね国際大学に移って
きた。
文芸部の顧問をしており、学生からはクワコーと呼ばれている。
クワコーの教室では、学生は携帯をいじったり、化粧をしたり、
おしゃべりをしたりというラウンジ的空間にいるだけだ。
必修だし、出席だけは大学の方針でうるさいし…。
給料も安いが、その分やる気も存在感もないクワコーだが、
食生活では手間ひまを惜しまない。
昼は弁当持参、先日は近所の子どもたちにバカにされながらも
ザリガニを取り、美味さのあまり感涙にむせんだ。
生活逼迫の折、止むを得ないのだ。
さて、本書はミステリー。
クワコーが文芸部の女子学生と挑む、試験答案紛失の謎、そして
夏合宿での水着紛失の謎、の2編。
しかしクワコーは狂言回しの役割で、推理は文芸部の学生たちがする。
「下流大学」のわりには学生たちはなかなか積極的で行動も素早く、
好感が持てる。
たらちね国際、実はなかなかの大学と見た。