大藪春彦 野獣BOX [DVD]
傑作の誉れ高い須川版「野獣死すべし」そして東宝ニューアクションを
代表する福田純の野心作「野獣都市」。東宝ならではの怜悧でクールな
ノワール(今風に言えば)。同じ大藪原作でも日活での宍戸錠主演作品
や角川映画でのそれと比べると日本映画として突出して乾いたタッチの
作品群であると判る。とくに映画斜陽の時代にプログラムピクチャーを
量産させられた福田純の作品は今一度再評価されてよい。
蘇える金狼 [DVD]
この映画の松田優作は、ふてぶてしく、たくましく、これまでのハードボイルド路線の総決算という感じで、とても格好いいです。当時、織田無道氏所有の真っ赤なカウンタックで夜明けの道路を高笑いしながら走るシーンはとても印象に残りました。なかでも、いちばん格好いいのはラスト近くの空港のロビーを歩くシーンで無様にこけるところです。これぞ松田優作という感じです。野獣しすべし以降の松田優作は役ずくりの為に歯を抜くなどして、顔もやさ男風になって、野性味あふれる雰囲気が薄れてしまった様に思います。私は松田優作の作品の中では、この映画が一番好きです。
汚れた英雄 デジタル・リマスター版 [DVD]
大藪作品の映画化はほとんどが失敗作だと思っています。たとえば銃に対する大藪氏の愛着、こだわりが生かされていません。松田優作出演の映画で、オートマチックを撃ち尽くした後ですべての薬莢を手で排莢している映画までありました(泣)
しかしこの作品に限っては大藪氏の2輪そしてレースへの愛を存分に表現していて素晴らしいものに仕上がっています。角川氏の監督としての才能に脱帽です。
もちろん主人公のダーティな面が出てこない点など原作と異なる点は指摘するまでもありません。しかし2輪レースのディテイルを丁寧に表現していく中で、紛れもない大藪作品、それも最高の作品に仕上げられています。終盤のトップ争いで、併走するカメラがとらえる美しくも暴力的なシーンでは路面の凹凸を拾ったカメラのブレさえも見るものの心を動かす効果になっています。
改めてDVDで見ましたが、オープニングの「あの」ミュージックから最後のテロップが流れ終わるまで、またクギ付けになってしまいました。
野獣死すべし (光文社文庫―伊達邦彦全集)
当時、早稲田大学の学生だった大藪の処女作だが、その後の大藪文学の基本ラインが完成されており、いかに氏が早熟な才能を秘めていたかがわかる。まあ、プロットは粗削りだし、若書きゆえのぎこちなさと鼻につく美辞麗句はあるものの、鬱屈した青年のマスターベーションだけにとどまっていない。
伊達邦彦を通して、大藪には身体の内側に充満する静かな怒りがみなぎり、人にすがることをあきらめたニヒリズムが伺える。
本書の文体は特に二十代青年特有の、触れれば切れん尖鋭化した精神状態が顕著に見て取れる。男なら誰もが経験するそれではない。支配者に飼われるかわり、長生きを約束された家畜化した人では縁遠いだろう。迫害されてもいい、たとえ太く短い生涯だとしても、狼としての孤高をめざす途上であらわれる症状だ。
その爆発しそうなエネルギーのやり場をどこにぶつけるかが問題だ。
生と死が隣り合わせのレーサーや登山家になる者、芸術にぶつける者、出世しトップをめざす者もいる。なかには捌け口を見つけられず(あるいは実現できず)、『自爆』してしまう者だってめずらしくない。
本書には『快楽』における名文がある。尖鋭化した青年がこれから先、どう生きるかのヒントが隠されているように思えてならない。
「現世の快楽を極め尽くし、もうこの世に生き甲斐が見出せなくなった『時』が来たら、あとはただ冷ややかに人生の杯を唇から離し、心臓に一発撃ちこんで、生まれてきた虚無の中に帰っていくだけだ。
彼にとって、快楽とはなにも酒池肉林のみを意味するものではなかった。キャンバスに絵具を叩きつけるのも肉体的快楽であり得たし、毛布と一握りの塩とタバコと銃だけを持って、狙った獲物を追って骨まで凍る荒野を、何ヶ月も跋渉することだって、彼には無上の快楽となり得た。
快楽とは、生命の充実感でなくしてなんであろうか。」
処刑軍団 (徳間文庫)
わかってる人には周知の事実ですけど、
この人と西村寿行さんは、アクション・バイオレンス界の
二大異端児です。
一人は娯楽としての狩猟賛成派。
もう一人の寿行さんは酒場で大藪さんに
口ゲンカ挑んだくらいの、筋金入りの
反対論者。
ぼくはどっちも好きです。
この処刑シリーズ、ぼくはこの「軍団」が
「戦士」より面白かったです。
まあどちらも、金と権力使って
ふんぞりかえってる政治家や企業家や暴力団を、
必殺仕置人のメカニックバージョンで
次々に処刑・仕置きしていく、という
話に違いはありませんが。
密度が、こっちのほうが高い気がする。
こんなの、漫画だったら、ゼッタイにR18指定で
図書館にも入らないのに、ふつうに買える・読めるって、
痛快ですねっ!!