黒い雨 (新潮文庫)
終戦65年ということで読んだ。
主人公の閑間重松が、自らの「被爆日記」を清書しはじめるところから物語は始まる。
「原爆病」であるという噂のために縁遠くなってい姪矢須子の縁談成立のため、彼女が被爆者ではないことを証明しようと考えたのだ。(原題は「姪の結婚」であったが、途中で「黒い雨」へと改題されている)
本文のほとんどは重松の被爆日記で、原爆投下当時の状況を回想する形になっている。
リアリティがあり、作品としての価値は高いとは思うが、
どこまで読んでも救いようがない世界が広がっていて、読んでいて苦しくなるのも事実である。
この本を読むのは2回目なのであるが、恥ずかしながら1回目はこの重さに耐えられず挫折してしまった。
どこまでも暗い世界が淡々と続いている感じ。
ただ、最後まで読み通すと「うなぎの子が遡上する場面」「五彩の虹を期待する場面」に若干の明るさを感じることはできた。
一度は読んでみるべき作品だが、覚悟が必要。
本日休診 [DVD]
昔は八春先生のようなお医者さんが本当にいました、柳永二郎が愚痴をこぼしながら明るく対応していく姿は見ていて元気をもらえます。
三国連太郎は儲け役、鶴田浩二の医院での柳との駆け引きは面白いと思います。
貸間あり [DVD]
川島雄三監督作品というと幕末太陽伝くらいしか容易に手に入れることが出来ず、ケーブルテレビの番組表とにらめっこしてはチェックしていた。とりわけこの作品は原作者の井伏鱒二が気に入っていなかったためテレビ放送をすることが出来なかったいわくの作品なので、こうしてDVDで見ることが出来るのは非常に嬉しい。
内容といえば一つのアパートの奇妙な住人達が織り成すドタバタコメディーなのだが、そこには意思をもちながらも日常に流されていく日本人の姿が主人公を通して描かれている。また、本作に登場する「サヨナラだけが人生だ」は川島監督を代表する有名なセリフなのでファン待望のDVD化でもあると思う。
今では白髪になってしまった藤本義一が若い頃に師匠である川島雄三とアパートの設計図から作り上げていった作品、心して堪能したい。
下部温泉の天然鉱泉水・ミネラルウォーター信玄10L
妻が、ワラビのあく抜きでついうっかり両手に薬品火傷を負ってしまいました。かなり重症で両手がはれ上がり感染症の心配もありました。この下部温泉は傷に良いということで有名でしたが確かに
その効果は抜群で(飲用でなく、浸漬で使いました)医者にかかることなく今はほぼ完治しました。若し、医者にかかっていたなら、両手とも包帯ぐるぐる巻き、且つステロイド剤多用で今ほどに良くはなっていなかったと思います。(医者に行ってはいないのでわかりませんが・・・)でも、結果的に下部温泉を選択して良かったと思っています。良い水です。信玄の隠し湯、確かです!
ドリトル先生航海記 (岩波少年文庫 (022))
全巻そろえて読んで、間違いない名作中の名作。第2巻の「航海記」はそのなかでも、1巻「アフリカ行き」と双璧の傑作。なによりも、話題の豊富さと、よどみなく流れるストーリーの展開が、飽きさせない。子供も大人もみんなで楽しめる。「航海記」は、スタビンズの最初に登場する巻で、ドリトル先生を外側から眺める珍しそうな眼が読者と一緒になる。ロンドンの風物も至る所に現れて雰囲気も最高。そして今ならエコロジーとか平等思想と言ってしまうような観念が、ここでは知的な優越性も変に鼻につく批判性も無く、伸びやかに表現されている。作者は、ほんとうに先進的な開かれた精神の持ち主だったのだなあ、と数十年ぶりに子供に読んで聞かせながら思ったものだ。翻訳も最高で、すこしとぼけて、泥臭いが、ふくよかで、骨太で明朗な世界が「翻訳語」ではなく、ふつうのことばであらわれる。そうかといって、ロンドン情緒や異国の世界の匂いをうしなわないところは、翻訳者の学識とセンスなのだと思う。井伏鱒二の小説より却ってこのシリーズの日本語のほうが素晴らしく、井伏鱒二の傑作と言いたくなる。本文の要約のセテンスが入った挿絵は、なつかしくもユーモラスで、頬を緩ませる。生涯に亘って繰り返し読まれて良い名作だなあ、と思う。