世界史の中の石見銀山(祥伝社新書202) (祥伝社新書 202)
ネタ晴らしをしてしまうと、本書の最大のポイントは16世紀後半のスペインによる隣国ポルトガルの併合とディアスポラ(離散民)となったポルトガル人の存在だ。石見銀山が世界の銀の流通の六割を担ったことがあるとか、Iwamiが日本の銀の代名詞であったなどはよく知られているが、大久保長安(これももう一つのネタ)によって導入された最新鋭の銀の精錬法がこうしたポルトガル人との共同作業であったという仮説は大変に面白い。
世界遺産石見銀山を歩く (歩く旅シリーズ 街道・古道)
穂坂氏は、日本以外の世界遺産を中心に撮影してきた、世界的に活躍する異色の写真家。若き日々をアメリカで過ごし、日本人としての感性と共に、アングロサクソン的な感性も持ち合わせており、カメラのアングルも他人に例を見ない特殊性があり、素晴らしい。
自分を産んでくれた日本に対する恩返しのつもりもあり、今回初めて、日本の仕事をし、日本の世界遺産を撮ることとなったという。しかも、古代から延々と長い歴史を誇る石見の国にある、石見銀山をテーマとした。
穂坂豊という名も、古代の神々を想わせる、マッチした名であり、これが日本での始めての仕事であるとは・・・、とても偶然とは思えない。
日本人以上に、離れた視線から日本を知る穂坂氏のタッチが新鮮である。
古代出雲との関係、佐毘売(石見銀山内に同名の神社もあるが、出雲・石見国境の三瓶山の古名で、色々隠された歴史があるらしい)、饒速日尊や物部氏、柿本人麻呂、朝鮮半島を先祖の地と称していた大内氏、江戸時代の鴻池財閥を末流に持つ出雲の尼子氏、毛利氏、徳川氏、そして近代産業の遺産等々・・・恐ろしく膨大な歴史の秘密が隠されている地である石見。鉱山・鍛冶・瑞穂の国・北前航路を生み出した海運の伝統・・・日本の伝統精神が凝縮されている。
直ぐに使える観光ガイドブックとしても優れているが、通り一遍でなく、隠された歴史についても余韻が残るような構成となっており、温泉津の温泉宿ででもじっくり読み返してみたい秀作だ。
また、その著作「てんのじ村」で有名な難波利三氏が、温泉津出身だとは知らなかった。精読することにより、色々なことに気づかされるおもしろい本だ。
石見のおんな
世界遺産「石見銀山」を舞台にした切々たる愛の演歌です。永井裕子さんの抜群の歌唱力、哀感を含む声、難しい曲も易しく歌っているようで、何回聞いても飽きる」ことがありません。聞いても歌っても楽しい曲と思います。