首都消失《デジタル・リマスター》 [DVD]
地味である。が、好きな映画だ。
小松左京先生の原作を知っていれば、まあ・・・許せる内容であるが、
原作を知らないで見てしまった人は、さあどうだろう。
内容は他の紹介サイトにお譲りするとして、
気になるのは「デジタルリマスター」度であったが、
フィルム特有の粒子感そのままに、綺麗にノイズ除去されており、
冒頭色が転んでいる個所がいくつかあるものの、満足のいくリマスター内容であった。
火花やフラッシュ効果の多い「東京上空」シークエンスも
タイリングを感じさせず、とてもいい仕事(圧縮率)でエンコードされている。
劇場(とビデオ版)では東宝マークから始まって、大映マークが入るという
当時の事情にあった幕開けだったが、今回のこのDVDではその2つのマークがカットされている。
大映が角川に吸収されちまったので、しょうがないのだが、カタイことヌキに雰囲気残してほしかった。
特典映像は予告編とスチール数点という地味な構成。
うれしかったのは8Pのカラーブックレットがついていて、
そこには小松先生のDVD化にあたっての寄稿文と、特美の長沼孝氏が書いたと思われる
SMC車のデザインスケッチと図面が収録されている。
我らが中野監督のコメントは残念ながら当時のパンフレットからの再録のみであり、
オーディオコメンタリー一切なしというファンの期待を大きく裏切る構成内容で★3つである。(笑
とにかく中野・佐川コンビの「東京上空」コースをもいちど飛んで見たい方は
是非どうぞ。
完全読本 さよなら小松左京
小松左京の死によって僕の中では、改めて昭和が終わった感じがする。
昭和の巨人の死だ。
雑誌にしても新聞記事にしても通り一遍の記事で、村上春樹がノーベル文学賞をとるかどうかという記事とは正反対な扱いだ。
手塚治虫が死んだ時に感じたように、社会が先駆者に与える冷たい仕打ちに、今回もがっかりさせられていたところだった。
手塚の追悼号の白眉には朝日ジャーナルの「手塚治虫の世界」や、宮崎駿氏の熱い追悼文、手塚治虫に『神の手』をみた時、ぼくは彼と訣別した」が掲載された『COMIC BOX』があった。
小松左京氏にもそんな本が出ないだろうか待っていた所、徳間書店からついに真打ち登場である。
この本は、小松氏への愛と尊敬が溢れている。
これから、小松作品(含む映画)に触れようという人にもとっておきの入門書となっている。
発見された新作原稿や未収録作品も素晴らしいが、
小説のみならず、映画の論評を集め、さらに70名近い人に追悼アンケートを行い、好きな作品を紹介している。
また、追悼対談や、寄稿も、小松氏の身近な人から3段組、所によって4段組で300ページという
尋常じゃない量を集めており、内容も本当に心のこもったものだ。(CDは未聴、これから、ゆっくりと楽しみたい)
そしてなにより、1967年SFマガジンに載った小松氏の「”日本のSF”をめぐってミスターXへの公開状」、はじめて読んだ文章だが、
朝日新聞の匿名記事におけるSF批判に対する反論記事だが、この火の塊のような情熱はすごいと思う。
手塚や、小松等の第一世代のSF作家らは、道なき所に道を作り、まさに寝食を忘れて、SFや漫画という表現に打ち込んだだけに、
尋常じゃない情熱が溢れている。
とにかく手にとって、読んでいると一緒に熱くなってくる本で、こんな本を待っていたんだ、と語る自分がいた。
いまや、マンガやアニメは日本を代表する「文化コンテンツ」で上手に利用するとどれだけでも金を生み出す打ち出の小槌だそうで、政治家も省庁も国をあげて積極的に支援をしていきたいそうである。
僕らは、子供心に、親や新聞がマンガの事を低俗な分化として糾弾していた時のことを思い出す。
手塚の漫画が低俗で悪質だと聞いた時の理不尽な糾弾に対する怒り。
SFがくだらないものと蔑まれ、世界文学や日本文学と称する作品名や作家の名前を上げ、それと較べていかに低劣で、くだらない読み物にSFが属するのかを諭す教育者や親たちの無理解。
だからこそ、僕達は、漫画を応援し、同様に低俗な読み物であるSFを愛したのではなかったのか。
日本のマンガやアニメには必ずといっていいほどSF的なフレーバーが加えられている。
戦後漫画の無意識を生み出したのが手塚治虫であるのならば、
クールジャパンの無意識を生み出したのは、小松氏等のSF作家たちではなかったのか。
3.11後の現在だからこそ、小松氏やその他の先駆者に追悼の意を表し、作品を読み返し、未来を見据えて、やれば出来るんだという気持ちを心に据えて、力強く進みたいと思う。
この本は手に入れたその日から「僕の宝」なりました。
3・11の未来――日本・SF・創造力
3・11から半年経って発行されたことにすら意味を感じてしまった。いろんな方の論考に触れることができて、日本のSFというものの再考を読むことができる。現場にある悲しみやつらさなどとは距離があると感じてしまうが、その距離感がSFからみた3・11なのかもしれない。「小松左京、最後のメッセージ」と謳われていたが、もっと大きな使命が刻まれていると読むことができると思いました。
日本沈没 [DVD]
うる覚えで恐縮ですが。
コミックス『太陽の黙示録』の雰囲気というか、アイディアのスタート地点というかがこの『日本沈没』のそれと一緒に見える。ボクが『太陽の黙示録』を初めて読んだとき、「だいぶ前にこういう内容の映画観たな」と思った。題材が似ていることは特に気にしないが、この『太陽の黙示録』の帯に、某超有名映画人による「日本ではこういう映画は作れない」という趣旨のコメントが書かれていて、ボクは苛立ちを覚えた。映画として『日本沈没』という前例がありながら、完全に無視されていることに他ならないからだ。(付け加えるなら、「こういう映画をを作れない」ようにしてしまったお前ら映画人を恨む、とも思った)
その後、『日本映画半世紀の歴史』みたいな本を見つけるたびに一応目を通すが、『日本沈没』の名は出てきたことがないと思う。(ちなみに『復活の日』は一回観た(笑))
この映画はかなり危険で、難しい、鬼門というべき内容のテーマを取り扱っていると思う。最近樋口監督によるリメイク版も出たが、それでもこの旧作との比較みたいな批評は公には少なく、こっちにはあまり光が当たらなかった気がする。
だからボクは忘れられた名作と言いたい。