Algebraic Geometry (Graduate Texts in Mathematics. 52)
スキーム論に基づく、もっともスタンダードな教科書といえる
と思います。
各章の内容を書くと
1章 座標をもちいた射影代数多様体の基本
2章 スキーム論入門
3章 層のコホモロジー
4章 代数曲線
5章 代数曲面
となっています。
1章は、2章以降の内容にイメージを与えるために書かれた
感じがあり、面白いところまでは書き切れていません。4,5
章は、代数曲線、曲面の基本的な性質を論じていて面白いと
いえば面白いのですが、あまり深い内容には突っ込めていま
せん。入門書として、あるいはページ数の制約上、限界は
あります。
2章、3章はよく書けていると評価ははいいと思いますが。
今の若い数学者とかも結構な割合でこの本でスキームを勉強
したのではないでしょうか。
ただ、欠点としてはます、著者自身が認めているように、
必ずしも各定理をより一般的な条件下で証明することを
放棄しています。例えば、固有射で成り立つ定理を射影
射の時のみしめしたり(これは案外影響が大きい)、代数
多様体を、代数的閉体に限ったりと。複素代数幾何を専攻
する読者にとっては、大きな影響のない制限かも知れません
が、数論的代数幾何を専攻とする読者には要らん制限では
あります。
これがハーツホーン本の主たる批判の一つ。
もう一つは、本文で用いられる命題の結構な数を、練習問題
問題としてしまっていること。基本的で、基礎的な命題であれ
ば自分で解け、というのも合理的ですが、Chowの補題のような
重要でかつ決して易しくない定理を練習問題にしたりと。
(ただ、後者に関しては、Chowsの補題は、固有射に関する
定理を射影射の場合に帰着さえるために用いることが多く、
固有射を放棄して、射影射での命題証明を基本スタンスとする
この本の方針からして、必ずしも著者の怠慢ではないとは
思いますが。)
昨今、スキームによる代数幾何の教科書は和洋ともに充実
してきていますから、いろいろ探してみて自分の方針にあう
本を探されるのがいいかと。
スキームによる本として例示すると
EGA A.Grothendieck
いわずと知れた原典 恐ろしく長い本なので、通読する
ひまがあったら、その先の論文などを読んだ方がいい
例や、演習問題はまったくない。(というのも、この本
教科書ではない、あくまでも巨大な論文集なので)
Liu Algebraic geometry and arithmetic curves
スキームの基礎から初めて、チェックコホモロジーに
によるコホモロジーで、前半のスキームの基礎を展開。
後半は、デデキントスキーム上の相対次元1のスキーム
(数論曲線)を扱い、代数体上の(普通の)曲線の
リダクション理論を紹介しています。
本の構成がこなれていないのと、導来関手によるコホモロジ
理論の展開を放棄しているのが、残念。この本と、ハーツホーン
の3章をくみあわせ勉強するのもいいかもしれない。
練習問題が多いのは◎
Gortz Wedhorn Algebraic geometry
I,II巻が予告されてまだIしか出ていない。ハーツホーンの
二つの欠点を克服している。ただ、Iで600ページもあるの
で、IIがでると恐ろしい分量になるような気がする。
演習問題もそこそこあり、○
和書だと
永田ほか 抽象代数幾何学
入門書として(前半は)読めなくもないが、後半は、スキームの
固有スキームへの埋め込み定理(永田の定理)や、ZMTの代数的
証明(グロタンのオリジナルはコホモロジーによる)など、かなり
新しいトピックを追加した、入門の一歩、二歩先をいくほん。
演習問題なぞない。コホモロジーも言及せず、純粋に”代数”幾何
の本。初学は消しててを出さないほうがいいかと。
飯高 茂 代数幾何学
あとがきにあるように、楽しく、次の展開が楽しみになるような
小説のような数学書を目指したらしい。なので、その分数学的
な厳密性に書けているきらいがある(間違っているというわけで
はない)。高次元分類論の入門書としての価値はあるらしい。
GTMより英訳版があるが、各命題に証明をなるべくあたえ、数学書
としての体裁はよくなったが、面白さを犠牲にしてしまった、との
評価を聞く
上野 代数幾何
ハーツホーンに感じが近い本です。コホモロジーは導来関手はもちい
ていない。代数曲面に関する記述がうすく、代数曲線についても、
リーマンーロッホ+αといった感じ。ただ、読みやすいです。
宮西 代数幾何学
割と薄い本なのですが、必要な可換代数の命題、コホモロジー+
スペクトル系列の解説から始まって、スキーム論の基礎理論を
述べた後、曲線論、曲面論をさらりと開設しています。
複素代数幾何を志すひとなら、あま分厚い本には手を出さずに、
この本で必要最小限の知識をえるのがいいかもしれません。
ほかにもいろいろ代数幾何の本はありますが、思いついた(私がかじった)
本をいくつか。
リディック ディレクターズ・カット版 [Blu-ray]
作品自体はたいしてヒットしなかった(むしろ赤字)ですが、個人的には好きな作品です。
内容は、宇宙支配を企む集団(ネクロモンガー)の野望を食い止めるため、宇宙一のお尋ね者(リディック)が立ち向かうという一見ありがちなSF作品ですが、独自の世界観とシェイクスピア悲劇を彷彿とさせるストーリー展開が相まっており、なかなか面白いです。
また、顔面を模った戦艦や煙のような姿をした種族、サーチ能力を持つ生物といったように、出てくる造形物やエイリアンが個性的であり、SFといっても神話性が強く、その点はスターウォーズに近いところがあります。尤も、内容は渋くダークな世界観なので似て非なる別物といったとこでしょう。
ただし、リディックが宇宙一の悪という感じがせず(チョイ悪程度)、ネクロモンガーもあまり悪の集団らしさを描ききれていないのが残念でした。そのせいかヴィンがラジー賞最低主演男優賞受賞という残念な結果となってしまいました。
しかし、主演のヴィン・ディーゼルはこの作品と役を非常に気に入っており、興行的には大失敗であったにもかかわらず、ヴィンの強い要望で続編を2作も製作予定中だそうです。
全体的に激しい宇宙戦争シーンやアクションは少なめですが、地味ながらも内容の濃い宇宙の神話が見たい方にオススメ。
ジャスリスン
デビュー作『Aijuswanaseing』('00)は、その完成度の高さは認められながらも、スティーヴィー・ワンダー、ダニー・ハザウェイといった70年代NEW SOULの偉大なる先人から、ディアンジェロ、マクスウェル、オマーといったここ数年のNEW CLASSIC SOUL~ORGANIC SOULの立て役者達の名前でしか解釈されず、「才能のある新人であるが所詮は二番煎じ」といった厳しい評価がメディアの主要見解だった。しかしそんな玄人衆の否定的見識を余所に、Musiqのデビューアルバムは発売当初こそ無数のアーティスト達に埋もれていたものの、日を追うごとに頭角を現し、"Love"というスマッシュ・ヒットも生んで、ついにはミリオン・セラーを達成した。こうしたマーケットの柔軟な反応に呼応する形で、当初は辛口であったメディアの間にも次第にMusiqのオリジナリティを評価する声が出始め、最終的にはソウル・トレイン・アウォーズにてベストR&B/SOULアルバムを受賞したのを筆頭に、HIP-HOP関連の賞までも受賞するなどMusiqは数多くの栄誉に輝き、Bilal等と並んでソウルクエリアンズが活動拠点としているフィラデルフィア発ニュー・フィリー・ソウルの顔と呼ばれるまでに至った。 そんな経緯を経ての約1年半ぶりとなるニュー・アルバムが本作であるが、前作で見せたHIP-HOPテイストばりばりのホットなトラック上で、かなりオフ・ビート気味に言葉を発しながらしなやかにメロディを紡いでゆく、といった彼の独創的音楽性にさらに磨きがかかった、見事な傑作に仕上がっている。このオフ・ビート・スタイルは確かにディアンジェロがパイオニアであるが、Musiqの場合はそれをさらに徹底し、進化させたものである。Musiq自身、多くのインタビューで「自分は歌うMCである」と語っているが、まさにソレ。ある時は完全なまでにリズムを無視し、まるでバックトラックと競いあうかのように、誰も思いつかないであろうロディをトラックに乗せてくる様は殆ど熟練MCのフリースタイル状態だ。しかしそれは決してRAPではなく、きちんとした歌、しかも流麗なメロディをともなった心ある歌になっているところがMusiqの凄いところ。これこそが彼の最大の魅力であり、オリジナリティではなかろうか。そしてこの究極のオフ・ビート・スタイルは自然と強烈なHIP-HOPテイストをリスナーに感じさせる。特に本作は前作に比較してファンク・チューンの比重が多く、女性コーラスも必要最小限に削られてソリッドになった分、前作のロマンチシズムが薄らいで、男臭くストリート感覚溢れる、時流にあった作品に仕上がっている。
正直なところを言えば、曲単位では"Love"、"Girl Next Door"、"JustFriends (Sunny)"などシングル・ヒット・ポテンシャルを秘めた楽曲の宝庫であった前作に本作は及んでいない。現在"halfcrazy"がヒット中であるが、この後に続くシングル候補は故ジョージ・ハリスンに捧げられたビートルズのカヴァー・ナンバー"Something"(Music & Lyrics by George Harrison)くらいしかないのではないか。しかしアルバム全体の流れ、統一感、そして重みは本作の方が圧倒的に上であり、Musiqの成長と彼がこれからのR&B/SOULシーンを引っ張っていくんだという決意が満ち満ちている。
恐らくこれはまだ通過点なのだろう。次、もしくは次の次あたりにとんでもないエポック・メイキングな作品を作ってくれるのでは・・・?そんな確信にも近い期待を抱かせてくれる、充実の2ndアルバムになった。