中国は、いま (岩波新書)
「国内政治」「軍事」「中国社会に鬱積する不満」「チベットやウイグルなどの周辺民族」「経済」「レア・アース」「外交」などについて、さまざまな筆者が書いた文章(全部で9章)を集めた本です。これら短いページ数の9章を掲載し、さらにその合間に「視点・提言」としてもっと短いコメントを5つ載せています。
岩波新書の小さな周密な活字であっても、新書1冊で、ダイナミックな動きをみせる「大国の中国」のこんなにも様々な側面を1冊の新書でカバーすることは、そもそも無理があります。
本書は、どの文章も良く言えば「堅実でしっかり書かれている」という感じで、「なるほど」と感じる部分もいくつかあります。
しかしその反面、あまりにも堅実かつ通り一遍な文章表現・内容すぎて「まるで役所が出している報告書のよう」という感じの部分がかなり多い感じもします。また、「これから、詳しい説明に入る」と思ってページをめくると「あれ? これで終わり?」という章もありました。
申し訳ないですが、私は本書を読みながら「たいくつ」と感じ、「この程度の解説なら、もっと平明に書けないの?」「もっと、表や図やグラフ化できないの?」「事実関係を中心に箇条書きで論点整理して書けないの?」などと思いました。
総じて言うと、間違ったことや偏ったことが書いてあるわけでもなく、有益な視点もなくはないものの、あまりにも平板・抽象的で、臨場感が乏しく、膝を打つ部分が少ない本と思います。
中国語で手帳をつけてみる
当たり前のことだが、中国語は文法も語感も中国語独自のものを持っている。でも英語、ひいてはヨーロッパ系言語に慣れ親しんでいる私たちにとって、全く独自の系統の中国語学習はかなり困難を極める。単に発音が難しいだけ、ではない。幾度となく挫折してはまた学習を再開し…という人も多いと聞くが、実は私もその一人である。
その私が新たな気持ちでまた中国語学習にトライするにあたり、藁をもすがる気持ちで手に取ったのが本書だった。日常生活で使うような細々とした単語、ビジネス関係、インターネット、スポーツなどなど実に様々な単語が、きちんとピンインとフリガナ付きでぎっしり紹介されている。これだけでも十分素晴らしいが、随所に散りばめられた「手帳に使えるミニ文法」が嬉しい。中国語文法の初心者は、この程度の“たった一文”でもなかなか書けない。文法書をあれこれ紐解くより、しのごの言わず難しい事抜きで、ここに書かれている事をそのまま覚えて応用したほうが、ずっと身につく気がする。
とにかく、膨大で漠然とした印象のある中国語におおざっぱな道筋を付けて頂いたようで、私にとっては再チャレンジの活力を与えてくれた有意義なテキストである。いちばん最後に載っている、日記に使えるひと言…のような、ほんの少し長くて感情のこもった一文が書けるようになる事を目標として、ほんの少しずつ少しずつ、また中国語学習を頑張っていこう―。そう思わせてくれた本書に感謝!
世界の国歌
これまで国歌のCDをたくさん買いました。でも、多くの場合、現地の演奏とかけ離れたアレンジやテンポにがっかりさせられてきました。このCDは、その点、かなり元曲に忠実な演奏が多いと思います。(ウズベキスタンなど、一部中央アジアの国々の国歌については、テンポやアレンジに不満がありますが...)。もちろん演奏の質は、他のアルバムの追従を許さない完成度です。資料的価値があります。ただ、収録されている国がもっとバラエティーに富んでいれば、さらによかったのにと思います。
文化大革命 (講談社現代新書)
本書は現代中国史の中で狂気の時代と言われた文化大革命について、三つの視点から書かれた解説書である。
第一部の「文化大革命の十年」では、文革とは何だったのかを時代を追いながら総括している。第二部の「毛沢東思想の夢と現実」では、文革のナゾの核心に触れるため、文革を引き起こした張本人である毛沢東の思想に迫る。第三部の「文革の推進者たち、被害者たち」では、文革の主要な登場人物に分けて、その栄枯盛衰を追う。
文革を理解するキーポイントの一つに、「毛沢東は死ぬまで第三次世界大戦不可避論に立脚していた」ことが書かれている。「革命によって帝国主義が打倒されないかぎり、戦争はなくならない」と狂信していたとするとするならば、不可解な文革の成り行きが多少なりとも理解しやすくなる。1966年に「大きな学校」という「1958年に提起した人民公社構想と酷似している」組織形態を持ち出したのは、彼の「人民公社路線への断固たる確信」の現れであり、それは彼の夢でもあった。と同時に彼の空想的社会主義の限界を示すものであった。
第三部の主要登場人物「紅衛兵」「江青と葉群」「林彪」「劉少奇」「周恩来とトウ小平」は、誰一人とて欠かすことのできない文革の犠牲者たちである。彼ら一人ひとりにスポットを当てて解説しているところが本書の特徴であり優れた点であると思う。