教祖誕生 [DVD]
ビートたけし原作の本作品は長く記憶に残っていたため、かなり久しぶりに観た。
当時の感動と変わらない感触であった。
よく仕上がっている。
当時は新興宗教が跋扈しそれなりに支持を得ていたという事情もあって、この作品が話題となったが新興宗教の内側をユーモラスに、かつ巧みに描いている。
役者も個性は揃いながら、それがうまく噛み合っておりお薦めの作品。
刑事マガジン Vol.7 (タツミムック)
今号で7号目となるが、今回は、昨年大ヒットした『相棒-劇場版-』のスピンオフ『相棒シリーズ 鑑識・米沢守の事件簿』(3・28公開、監督:長谷部安春、主演:六角精児)で今回待望の初の主役に抜擢された米沢守役の六角精児氏や米沢とともに行動する本作限定の新相棒・相原誠役の萩原聖人氏のインタビュー、ドラマでは反りの合わない間柄である米沢と伊丹刑事役の川原和久氏との対談を中心とした総特集や
ベテラン刑事と若手刑事の対立や所轄の実情をリアルに描いたヒューマン刑事ドラマの名作『刑事の現場』の第2弾『リミット―刑事の現場2―』(NHK総合:2009・7・11〜8・8:全5回)で若手刑事・加藤役の森山未來氏やベテラン刑事・武田鉄矢氏のインタビュー、
さらには今秋公開の映画『笑う警官』(11・14公開予定、監督:角川春樹、主演大森南朋)で角川春樹監督のインタビューなどボリューム満載の内容である。
毎回楽しみにしている『THE 刑事ACTORS FILE』のコーナーでは『大都会』で“坊さん”こと大内刑事や『踊る大捜査線』の袴田課長でおなじみの小野武彦氏が取り上げられており、『大都会PART2』での東京タワーの頂上に下着姿で人質となった大内刑事の挿話の撮影秘話や共演者・松田優作との挿話も興味深い。
他にも『西部警察』の空手家である北条卓刑事や『あぶない刑事』で浅野温子扮する真山刑事と同じ少年課に勤務する鈴江刑事役を演じた御木裕氏のインタビューで空手の師匠である芦原英幸氏や俳優・石原裕次郎から“裕”の一字を頂いた挿話など興味深かった。
次号では、『スケバン刑事』で麻宮サキを演じた斉藤由貴や神恭一郎役を演じた中康次氏、暗闇指令役の長門裕之氏、サキの最大の敵・海槌麗巳を演じた高橋ひとみのインタビューや『スケバン刑事II 少女鉄仮面伝説』で二代目・麻宮サキを演じた南野陽子や矢島雪乃役の吉沢秋絵、中村京子役の相楽ハル子との鼎談が是非見たい。
オトナアニメ Vol.7 (7) (洋泉社MOOK)
さよなら絶望先生の記事が目的で購入。副監督の龍輪直征のインタビューを元にした
全話レビューが掲載されている。なかなか読み応えのある話で、DVDを再度観たく
なる内容だった。
また、ef - a tale of memories.の監督を務めた大沼心のインタビューも掲載されて
いる。2007年度、最大のダークホースだった作品だけに興味深い話が読める。
最近のシャフト作品が好きな人なら購入して損はないだろう。
意外だったのは、三才ブックス村中編集長のもえたんインタビューだ。これは
おもしろい。いろいろな意味で話題の作品だっただけに爆笑ものの内容になっている。
放送されたのが、絶望先生と同じ時期だったのも興味深い話として出てくる。
オトナアニメと銘打っているだけに、インタビュー記事が中心で良いのだが、少し
値段が高いように感じる。ビジュアルをほとんど必要としない雑誌なので、カラーページ
を削るなどして値段を下げてもらえると助かる。また、発売時期や、次号予告は
もう少し正確にお願いしたい。発売が遅れたり、内容が予告と違っていることが
多々見受けられる。このため実際に発売になったみるまで注文することが出来ない。
そういった点は残念だ。
BOX~袴田事件 命とは~ [DVD]
光市母子殺害事件の死刑判決が確定し、世を挙げて「本村さん、ご苦労さま!」「正義はついに勝ったね!」「世の中にはあんな悪いやつがいるんだから、死刑が存置されるべきなのは、当然だね!」といった意見が渦巻く中で、テレビドラマ『なぜ君は絶望と闘えたのか』のDVDを3回も続けて鑑賞した直後に、それと対極に位置するこの作品を観た。
『なぜ君は絶望と闘えたのか』の訴求力は、確かに大きかった。そして、あのテレビドラマや、その原作である門田隆将の同名の本に感激する人に対して、「しかし、ちょっと立ち止まって、冷静になれよ。制度としての死刑の是非をあの事例だけから判断するのは、控えたほうがいいよ。冤罪死刑という重大問題を君はどう思うのだね?」と問いかけると、決まって「冤罪の問題を死刑廃止の論拠に持ち出すのは、論点のすり替えだ」とか、さらに勇ましいのになると「あらゆる文明の利器にはリスクがともなう。冤罪がリスクだから死刑をやめろというのなら、新幹線も飛行機もやめねばならない」といった意見を吐く。
その人たちがもし、「死刑存置には賛成だが、その前提として、被疑者・被告人に対しては必ず最初から弁護士をつけ、事情聴取段階から始まって、取り調べの全過程を録画することが必要だ。代用監獄は廃止し、取り調べは最初から弁護士立ち会いのもとに検察官が行なうことが必要だ」などを熱心に主張するのならば、その死刑存置論にも一理はあると、私も認める。しかし、わが国で被害者や遺族の思いを代弁すると称して運動を始めた人たちの大多数は、そうした冷静さ、公平さをもたず、「殺人事件被害者遺族の癒されがたい思いの重さを知れ!」といった感情論で世間に訴え、その延長上に被害者参加制度を勝ち取ってきた。
袴田事件は、被害者遺族の訴訟参加なしでも、検察側の主張を裁判官が認めただけで(しかも、1人の裁判官は反対意見だったのに、多数決で決めて)有罪かつ死刑になってしまった事例だが、足利事件、布川事件などの、後に冤罪が証明された無期懲役事件で、もし「被害者参加制度」が適用されていて、被害者遺族が「この人を死刑にしてくれ!」と法廷で泣き叫び、その声に裁判官が動かされていたら、ただでさえデタラメだった警察のデッチアゲ捜査に対して「被害者遺族の声」が加勢することによって、冤罪死刑判決という恐ろしい結果になってしまっていた可能性がきわめて高い。
被害者団体の人たちは、このことをいったいどう考えるのか。ぜひ正面から答えていただきたい。
この映画の中に、あなたがたが避けて通っている「もうひとつの真実」がある。
(追記)なお、この映画を観た人は『袴田巌は無実だ』という本も買って、検察側証拠のデタラメさ加減などを、再確認することをお勧めする。映像だけだと、情報が流れ去ってしまい、手許に定着しないから。また、袴田さん自身の肉声は『主よ、いつまでですか』で読むことができる。