父の詫び状 <新装版> (文春文庫)
私は、なよなよとした文体は好きではありません。
その点、向田さんの文章は竹を割ったようなスパッとしたタッチであるところに魅力を感じます。
歯切れの良さからは男っぽさすら感じますが、若かりし日の写真集などを見ますと、とてもおしゃれで、
多忙な中で洋服を手作りされていたようですね。
また、さまざまなエッセイからは、妹さん弟さん思いでご両親のことも大切にされて、大変に温かく
細やかな心の持ち主だったことがわかります。
あの日、突然私たちの世界から消えてしまった向田さん、まだまだ書き続けていただきたかったです。
向田邦子の手料理 (講談社のお料理BOOK)
向田邦子さんの作品を読んで、湯気の立つような食卓の場面、
日常生活の様がリアルに浮かぶ方にとっては、まさにそのような
食卓に並ぶ一品を再現することができる本である。和洋中
を取り混ぜた日本の食卓の手料理であり、どれも食べてみたくな
るもので非常に重宝している。
美味しいもの、美しいものが好きな方にとっては、向田さんの
審美眼も楽しむことができる。
更に、作品との関係、ご本人の人となりをしのぶ読み物としても、
秀逸である。特に向田さんと親しかった方々が披露するエピソード
には、激務の中でも人付き合いを楽しみ、日々の生活を楽しむ
才気が伝わってくる。
向田邦子の恋文 [DVD]
ドラマを見ることの喜びを心の底から味わうことの出来た物語です。そもそも私の好きな大石静の手になる脚本だということすら知らず、単に山口智子がほぼ8年の沈黙を破ってドラマ出演したという話題性にのみ注目して見てみたのですが、なかなかどうして、演出も脚本もそして役者陣も申し分のない仕上がりです。
物を作る仕事に携わる人は、ささやかではあるが自分なりの世界や宇宙を生み出し、それを自分なりの色に染め上げようと努めるものでしょう。小さな世界の支配者たらんとする気概と力強さがあって当然です。山口智子演じる邦子はまさにそうした世界のとば口に凛として立つ若き放送作家です。
一方で彼女は、人生に倦み疲れてしまったかのような中年男性との<道ならぬ恋>を生きています。あの時代に仕事を持つ30代の女性がおおやけにすることの憚られる恋愛を生きることは、大きな異端であったはず。表に出すことの許されない「日陰の恋」を生きる彼女の姿は、自分の世界を力強く切り開く女のそれではありません。疲弊した男に慈しみの心を無条件で差し出し、あたかも相手の世界の中に自身を解消し、同化させていくかのようです。私はそこに<健気(けなげ)>という形容詞を見て取り、そして強く胸を打たれました。
向田邦子が後に飛行機事故で早世することは広く知られています。彼女がこの美しく儚い恋の物語をずっと胸に秘めたまま逝ってしまったことを思うと、他人がまねることは決して容易ではない彼女の<潔さ>にも思いが至り、私は涙を禁じることが出来ませんでした。
山口智子は徹頭徹尾納得のいく仕事だけを選ぶことを自らに厳しく課した稀有で有能な役者になったのではないか。私にはそんな風に思われます。こうした果敢な女優を殺すことのない日本の芸能界であってほしいものだと願わずにはいられません。
テネシー・ワルツ~ベスト・オブ・パティ・ペイジ
まぁ,この手のCDはなかなか薦めるっていうものではありませんが。好きな人は紹介されるまでもなく聴いているでしょうし,おじさん以外は興味はもたないでしょうし。
自分でもこのようなCDを買うようになるとは思ってもいませんでした。が,いいCDです。彼女の歌声も好きです。