登場人物の雰囲気や話の内容など全てにハマリました。
なんていうか私の育ってきた環境と作品の中の環境はまったく違うはずなのに、なぜか「なつかしい」という感じです。
文庫も出ていますがこちらもとても楽しめました。挿絵が描かれているので、人物の動きが想像しやすいです。早くDVD化してくれることを願っています。
恋する女たち [DVD]
大森監督は我々とは年齢差があるのでどうなるのかと思っていたのですが、これが不安を払拭するような素晴らしい映画でした。主役の斉藤由貴、相楽ハル子、高井麻巳子(役者の演技に慣れてたどうかは別にして)、みんな凄かったですよ。
あと、金沢の情景を「いちばんよく見せる」ところに凄くエネルギーを費やしていただけた金沢市関係の方々には敬意を表す。
月の輝く夜に (花とゆめCOMICS)
「なんて素敵にジャパネスク」や「ざ・ちぇんじ」のような元気一杯、平安ラブコメを期待する人には不向きです。
あえていえば「ジャパネスク」の人妻編後半のような愛憎劇です。
ゆったりとして静謐かつ織火のような物語は、ときにもどかしくも平安時代の恋を追体験できるような感覚を覚えます。
ただ、氷室冴子が狙って書いたのかどうかわかりませんが、紫式部風の自己憐憫的な物語展開なので結構好き嫌いはあるかも。
だから単行本未収録作品なのかもしれません。
ですが、山内直美の再現力には脱帽です。
漫画にするにはかなり難しい話だと思うので、本当によく描いたなと思いました。
海がきこえる [VHS]
一番最初から耳にするサウンドが素直でいいです。
若き頃の夏の思い出が掘り起こされるような
・・・そんな感じでしょうか。
この作品を見終わった後、また必ず耳にしたくなります。
私はジブリ作品は全て見てきたつもりでしたが、
唯一この作品だけは見ていませんでした。
そんな人は他にもいるんじゃないかな?
この作品を知ったときは「ああ、こんなのもあったんだ」
という感じで気にも止めませんでした。
なぜなら、ありきたりの青春ドラマのようで、
みるのが億劫だったからです。
しかし、そんな考えは実際見てからあっさり覆されました。「他のジブリ作品とは見劣りするが・・・」そんなこと絶対にないです!
簡単に言えば、作品の主旨は男と女の淡い恋模様ですが、
その関係は遠すぎず、近すぎず、それに尽くさず、
といった感じで見る者の心をしっかり捉えます。
・・これは見た人だけが分かるでしょう。
遠い夏の思い出に何かを忘れてきたあなた、
最近海を眺めたことが無いあなた
にぴったりの作品です。
あ、それとジブリを極めたい人にもね!!
月の輝く夜に/ざ・ちぇんじ! (コバルト文庫)
編集の点で言えば、『なんじゃこりゃあ!?』です。
表題作はシリアスで、後の三篇はコメディ。
平安ものと、現代もの、学園もの。
さらには、4編のうち1編は長編上下巻。
またそれとは関係ないシリーズもののアナザーストーリーに加え、別のシリーズの実質続編(未完、とは言っても単独で読めます)。
こんなつぎはぎだらけの編纂見たことない!
しかし、これは往年のファンたちの「あの絶版になった本をもう一度読みたい」
「幻の短編を一目読みたい」という切なる願いを、忠実にかなえた結果と思えます。
作者は一時代を築いたとはいえ、10年以上謎の断筆を経て夭折された人物です。
実際問題、少女小説というジャンルで全集などは難しいでしょう。
結果、このような形で出さざるを得なかった。
逆に言えば、こんな形ででも出す価値のあった作品だったということです。
亡くなられたときのコバルト編集部の態度は、恩人ともいえる存在の作家に対してはそっけないと感じられたものです。
しかし、こんな形でも『本』を作った編集部は、『氷室冴子』の才能(売れるかどうかってこととしても)を非常に高く認めていたのだと思えました。
表紙のことも。
今市子さんの絵がこれほど合うとは…!
編集部グッジョブ!
肝心の中身ですが、実質最後の小説が最初の作品群と一番通じるものがありました。
ふみにじられること、自分の中にある醜さを見てしまうことのいとわしさ、激しい思いを薄い膜で覆いながら生きていくこと。
少女がいつか知ること、通らなければならないそれを、崩れない文章できっちり書きあげていました。
人生は砂糖菓子ではなく、都合の良い王子様なんて、この世にはいない。
けれど、美しい物語の形がそこにはできあがっている。
最後まで読まずにはいられない物語が。
それこそが古い時代の少女小説が書いてきた世界だと思います。
氷室冴子が書いてきたものはライトノベルではなく、少女小説だった。
それを実感させてくれる最後の小説でした。
あ、ライトノベルも面白くて好きですよ。