されどワタシの人生
「ガロ」末期、彗星のように登場し、畳の目をひとつひとつ丹念に描く筆致をもって、多くの読者を辟易とさせ、そして一部の読者の目をチカチカさせたきら星のような作品が収められています。あのころ、自分の同様、心待ちにして読んでいた方も多いのではないでしょうか。個人的なことで恐縮ですが、自分の生活圏内にはこの作品で描かれているような人たちが多く暮らしており、食堂であったり居酒屋であったりに日々集い、得も言われぬ風情をただよわせています(家人にはどうしても馴染んでもらえませんが)。そういった場所で隣り合い、偶然耳にしたり交わしたりする言葉のひとつひとつが、東陽片岡のおそらくは初のコミックスである、ずいぶん昔の本書を思い出させ、いまでも結構手にすることが多いです。
うすバカ二輪伝
既にベテランと言っていいほどこなれた感のある東陽片岡であるが全て手描きで妙に黒々とした独特の絵は不変である。
美しい青春、苦い挫折、 などといった通り一遍の青春ものではないのにも関わらず何かさわやかな青春といったふざけた印象を受ける一作。
著者撮影の写真もグラフィティーなどとは無縁に非常に限定的に時代を写していて興味深い。
レッツゴー!!おスナック
遅れてきた新人であった東陽片岡も、もはやベテランであって、一連の風俗ものも、こなれた芸を見るかのごとくですが、この一作は「スナック」という「風俗」の一面に身銭を投じて来ただけのことはある、蓄積を感じる力作。(力作にしてはめちゃめちゃ力が抜けていますが)
題名通り、どの町にもある小さなおスナックを題材にした実体験も混ざってるらしい、ルポルタージュの味を持った連作です。
またカラオケがおスナックといかに不可分のものであるかも描き出しております。
これまた自身のムード歌謡への打ち込みようが反映していてカラオケ、ムード歌謡の世界にはまりこむ感がたみゃりません。
添えられた著者その他の手になると思われるおスナックを取り巻くスナップ写真が実にゆるい。
もはや東陽片岡はおスナック界の吉行淳之介と言っても過言ではないと。
何か時代離れしているようでもあり、逆に時代のようなものが見えてくるのです。
おスナックとは何かを知らない人もすっかり行きつけのような気分になることでしょう。