経営学入門 上 日経文庫 853
入門とうたっていますが入門書としては難解かも
私の先生に聞いたところ
「榊原先生は頭がいい人だから、これが最低ラインなんだろう」
と言われました・・・。
個人的には金井先生の本のほうが入門書としてはお勧めです
The Nature of Managerial Work
同書に手を出される方の中に、チンパンジーやボノボの生態、かつて(?)社会生物学と呼ばれたアプローチの中に、経営学とて結局は類人猿(=人間)により構成される『組織』の研究であると思うに至る方がいかほどいらっしゃるかとても気になります。若きH.ミンツバーグの同論文は、類人猿の群れの一位(α)オスの振る舞いに関する知識を元に読むと一層の凄みを持ちます。陳腐なイデオロギー(あるべき論)を排斥し、組織の長の振る舞いを眺めるとこう見えます。。。といった視点は、ポーターやアンゾフと同類に著者を『経営学のグル』と扱う風潮に『そりゃ、ミンツバーグ氏に失礼なのでは?』くらいの感情を抱かせますね。
MBAコースのテキスト、HBRに論文が載っちゃう系の研究者の著作を読みまくる決意を固めた方は、せめてこの本くらいは読んでおいていただきたいですね。
『なんちゃら戦略』がなぜあなたの会社で役に立たないか、この本の中にヒントが隠されていると思います。
マネジメント[エッセンシャル版] - 基本と原則
3年程前に購入して、常に私のバイブルです。
仕事とは何か?人生とは何か?今後どこに向かって歩いていったらいいのか?
在り来たりの常識論に疑問を感じ、対人関係でも疑心暗鬼になっていた頃にこの本に出会って、思考を再フォーマットしてもらいました。
読み返すたびに、その時々の環境、経験則にそって新たな世界観を提示してくれます。
小倉昌男 経営学
めちゃくちゃ面白い宅急便の本。
宅急便・宅配便が無かった頃にものを送ろうとすればそれは郵便に頼るしかありませんでした。ゼロからそれを作り上げるのはいかに大変で、かつ独創的な試みなのか教えてくれます。
とにかく人物も行動も面白い。小倉さんが亡くなったときにメディアの一部では「規制緩和に立ち向かった先駆け」のようなことを言ってましたが、それは曲解だ。規制緩和が叫ばれていて、それが目的であるかのように考える人もいるかもしれないが、そうではない。宅急便のシステムを完成させたいから結果として、規制にぶつかったのであって、はじめにキセイカンワありきではない。
黒字になるまでお茶を飲まない、といった一徹な姿勢から抜群の行動力までを、こんなに楽しすぎていいのかというくらいの面白さで描いている。
この本を埋もれさせるには、ちょっと惜しいと素人が思ってしまうような本です。
ストーリーとしての競争戦略 ―優れた戦略の条件 (Hitotsubashi Business Review Books)
昨年7月に読んだ。先に読んだ方々からも、ブロガーからも好意的なレビューが多く、そのような評価で定着したのかと思っていた。しかし、最近になって、アマゾンに来てみて、この本のレビューの上位が低い評価で埋め尽くされているのを不思議に感じた。レビュー内容を読んでみて呆れた。いくつかを除いてはほとんど読むにも値しないような内容だからだ。同業者の嫉妬? よくわからないが。
少なくとも時間に限りのある実務者としては、この本の学術的な価値などには関心がないし、ポーターを原文で読めという主張に耳を貸す気もない(翻訳で十分)。舶来ものばかりをありがたがる風潮が日本の経営学をダメにしていることがよくわかった。
ところで、この本で紹介されている戦略ストーリーと同じようなことを自分でやろうとしてみるとなかなか難しい。そもそも最初から何がキラーパスになるかはわからない。実際にやっていく中で見えてくることも多いのではなかろうか。この本で紹介されている事例も楠木先生がこじつけた後付けのものもかなり含まれていそうな気がする。しかし、紹介されている事例やフレームワークが頭に入っていれば、自分の関与する事業がどんなストーリーにのっているのか考え直してみるよいヒントになると感じた。
特にリーダーの立場では、事業の目指すゴールをメンバーに対して“具体的に目に見えるようなビジョン”として指し示す必要がある。この目的で考えるならば、この本で紹介されている事例は、「戦略を構成する要素がかみあって、全体としてゴールに向かっていくイメージが動画のように見えてくる」ものであり、まさに上記目的と合致しているとは言えまいか。言い換えれば、戦略ストーリーを共有することは組織を一つにするためのビジョンを共有することと同義である。
リーダーが、事業が成功にむかう戦略ストーリーを「わくわくしながら」メンバーに語り、それに触発されたメンバーが一つにまとまって、戦略ストーリーを共有しゴールに向かってベクトルがそろう。多分、当初は戦略ストーリーも緻密なものではなく穴だらけで突っ込みどころ満載であろう。しかし、メンバーが戦略ストーリーをよく共有していれば、一貫性が保たれ、ゴールに向かっていく中で、失敗がフィードバックされて、戦略ストーリーも磨きをかけられていくのではなかろうか。
以下、昨年読んだ時の感想である。
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読みながら、“これだ!”という腑に落ちた感じを何度も味わった。これまでの戦略論に欠けていたものがここにはある。500頁もある本だが、長さを全く感じさせない。
ベストプラクティス、ロジカルシンキング、バズワードを多用する、世の中で使い古された「戦略」に飽きた人向け。
ゴールへと向かうように、各構成要素をつなぐストーリーが有機的に繋がり、戦略が静止画から動画へと意味を持って拡がっていく。ベストプラクティス論をいくら学んでも、見えてくるのは一つ一つの静止画に過ぎず、各要素同士を結ぶストーリーは見えない。ストーリーの中核に、常識を無視する一手(著者はキラーパスと呼んでいる)を仕込んでおくことが鍵だ。常識に反する手は決して真似されることがない。したがって、キラーパスを無視して他の部分を真似しても、全体のバランスが崩れて自滅の方向に向かってしまう、という。
かくして、強固なストーリーに守られて競争優位が保たれる、という寸法だ。
このような事例がたくさん登場する。これほどわくわくとしながら読めたビジネス書は久しぶりだ。